26.ヒトとの関係性 ページ26
俺は戦う為に生まれたんだ。
ギルベルト君が語る、長いようで短かくて短いようで長いような話はその一言で始まった。俯いてぽつぽつと話すその姿は辛そうで見ていられなくて、思わず視線を外そうとした。けれども彼の話を、辛さを受け止めてあげるんだと自分に言い聞かせ、ただ静かに見つめた。頭に乗っている小鳥もどこか悲しげに見えた。
「朝も昼も夜も、四六時中戦う事ばかりでさ。親父に教わったのもほとんどが戦術や体術で、いつもいつも俺の家の奴らに期待されていたよ。我がクニは負けない、ギルベルトが負けるはずないってプレッシャー。戦う事は好きだったけど、正直皆の目が嫌だったんだ」
もしかして彼は過度な期待を掛けられて、鬱になっていたのかもしれない。私はそんなに期待も注目もされないけれど、あなたなら出来る、っていう目をされたら余計に気持ちが高ぶってしまうと思う。一回すうっと息を吸って、ギルベルト君はまた口を開いた。
「だから最強でいるためにも訓練も怠らないで頑張ってきた。期待を裏切るとすぐ仲間はどこかへ行ってしまう。所詮ヒトっていうのは自分の利益になる事しかしない生き物だからな、当然っちゃ当然だけど」
そう言うと、彼は悲しそうな表情を浮かべた。口では笑っているけど、目は全然笑っていない。そりゃこんな話をしている時に笑う人なんていないだろうけど、"ヒト"という言葉が出た時に私は、心が痛くなった。自分の利益になる事しかしない。もしかしたら私も、そうかもしれない。
「でも、やっぱりずっと最強の座にいるってのは無理な話だったんだ」
いきなり話の雲行きが怪しくなり、どうしたの?と言いかけたが口を閉ざした。この出来事が事の発端だったのかもしれない。真っ直ぐにギルベルト君の目を見つめて、早く言えと促す訳じゃないけど、生唾を飲み込んだ。
「初めて、負けちまったんだ」
聞きたくない言葉がギルベルト君の口から漏れる。まさかとは思ったが的中だった。こんな時に良い勘を働かせるなと神様にゲンコツをくらわせてやりたい。
「しかも俺は戦いの事ばっかで1人で、相手は合併しているクニで。友情を見せつけられちまったよ」
仲間に離れて行って欲しくない一心で頑張っていたのに、気がついたら同じクニがいなくなってしまっていて。それに加え、過度な期待をされていたギルベルトくんは負けた瞬間、どんな気持ちだったのだろう。想像しただけでも胸が痛い。
14人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くるりん(?・ω・)(プロフ) - 薺さん» 貴重なご意見、ありがとうございます…!まず人種が違いますから、合併なんかも出来ないですし本当に愛し合っていないと結ばれないんじゃないかな、と考えると止まらなくて!拙い文章ですが、頑張らせて頂きます! (2017年3月31日 12時) (レス) id: 405f58ad2d (このIDを非表示/違反報告)
薺 - はじめまして!最後まで一気読みしちゃいました!ヒトとクニの切ない描写がなんかたまりません…!更新頑張ってください! (2017年3月29日 20時) (レス) id: 8d03f80a9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:くるりん(✿・ω・) | 作成日時:2017年3月12日 0時