２４．恐怖心 ページ24
「はあ……」
ため息混じりに歩く長い長い学園の廊下は、いつも以上に憂鬱だった。端が見えない、とさえ思うようなこの道のり。私は何故こんな所をただひたすらに歩いているのだろう、と思うほどに重い足取りだった。
だが足取りの重さは増していくことになってしまった。ちら、と見えたのは、いつもの様に廊下でたむろしている人達。そこで話していたのは、名前さえ知らないがいつもアーサー君と言い合いをしている男の人。くるくるふんわりとした金髪の持ち主だ。そしてその人と親しげに話していたのは他の誰でもない、ギルベルト君だった。
ぼんやりとその会話を見つめていると、ばちっとギルベルト君と目が合った。彼は目を見開いて、私の視線を掴んで離さない。その威圧に圧倒されて思わず固まっていると、ギルベルト君がずかずかとこちらへ近付いてきている事に気が付いた。独特な銀髪が揺れている。
しまった、と後悔している暇もなく、ギルベルト君は私の目と鼻の先にいた。彼の鋭い目線は睨まれているのか、という殺気さえ感じられ背筋に寒気が走った。図体が大きく、いつも話しているロヴィーノ君や菊さんと比べ物にならないほどの高身長。恐る恐る見上げても、影で表情が読み取れなく、更に怖い。
「おい。お前か？アントーニョが言っていた、ヒトの奴」
口を開いたかと思うと、とんでもなく低い声が耳に入ってきた。今きっと私の表情は、恐怖のあまりひきつっているだろう。あんな放送をするくらいの人なのだから、もっとフレンドリーな人かなと思った私の考えは裏切られたかもしれない。
「……？おーい、聞こえるか？」
何も答えない私を不思議に思ったのか、ギルベルト君は返答を求めるかのように手を私の前でひらひらさせた。口が硬直したように動かない。何か言おうとするも、あ…、えっと…等という言葉が漏れるだけだった。
どうしよう。何か言わないと。気持ちが高ぶり、何を考えたか私は回れ右をし、走った。後ろからは驚いたギルベルト君の声がする。何も聞こえない、というように午後の授業も受けずに門へ向かおうとした時、彼に追いつかれた。息切れひとつしていなかった。
彼はぜえぜえと肩で呼吸をしている私を落ち着かせると、今度は校庭の敷石に座って同じ高さで問うてきた。改めてこう、彼に向かい合っているとあんなに怖く見えた彼も、ロヴィーノ君たちと同じ、普通のクニだった。
２５．情けなくて切なくて→←２３．予想内の返答と予想外のおせっかい
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くるりん(?・ω・)(プロフ) - 薺さん» 貴重なご意見、ありがとうございます…！まず人種が違いますから、合併なんかも出来ないですし本当に愛し合っていないと結ばれないんじゃないかな、と考えると止まらなくて！拙い文章ですが、頑張らせて頂きます！ (2017年3月31日 12時) (
レス) id: 405f58ad2d (このIDを非表示/違反報告)
薺 - はじめまして！最後まで一気読みしちゃいました！ヒトとクニの切ない描写がなんかたまりません…！更新頑張ってください！ (2017年3月29日 20時) (レス) id: 8d03f80a9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くるりん(✿・ω・) | 作成日時：2017年3月12日 0時
