外国 ページ37
｢外国行きてぇの？｣
大野さんの声。
私は思わず駆け寄ろうとして、でも女の人といた姿を思い出して止まった。
気配がすぐそばにやって来た。でも顔が上げられない。
私はじっと目の前の地球儀を見つめた。
｢A？｣
名前を呼ばれただけで、胸がきゅーっと締め付けられた。
どうしようもなくこの人が好きだと実感する。
嫌われたくない。
まだ別れたくない。
私は明るい声で言った。
｢一度も海外って行ったことないなって思って見てて｣
でも顔はあげられない。
｢･･････行きたいの？｣
｢いつか････｣
｢俺も行きたいとこある｣
｢そうですか｣
｢･･････興味ねぇ？｣
びっくりして顔をあげて大野さんを見たら、ちょっと寂しそうにしていて、慌てて首を横に振った。
嫌いだから反らしてたわけじゃないの！
｢ちがっ｣
その時、さっき大野さんが話していた人が姿を現した。
｢大ちゃん、準備出来たよ｣
大ちゃん？
大野さん、大ちゃんって呼ばれてるの？
親しいんだね･･････。
｢あんがと。じゃあ金払う｣
｢大ちゃん、そちら彼女さん？｣
目が合ったから、ぺこりと頭を下げた。
｢へぇ〜、いいなぁ｣
いいって、何がいいの？
店員さんが近づいて来る。
どうしようって大野さんを見たら、大野さんは私からも店員さんからも目をそらしていた。
それが何だか不自然に思えた時、店員さんが言った。
｢元彼女ですー｣
｢え･･････｣
｢彼女、絵は描かないの？ 文具も置いてるからこれからもどうぞ御贔屓に。買わなくてもいいよ？ 昔の大ちゃんのこと知りたかったらいつでもどうぞ？｣
きゅっと目を細めて、長居はせず明るく笑ってレジの方へ去っていく彼女。
大野さんの元カノ･･････。
呆然と大野さんを見たら、まいったなって顔で自分の襟足を触っていた。
｢大野さん、彼女を紹介しようと思って私をここに連れて来たの･･････？｣
｢いっ!? まさか。･･････ここにいるの知らねぇもん｣
｢行きつけでしょ？｣
｢先月入ったって。･････がっこ行ってた時の奴｣
学生時代の彼女･･････。じゃあもう10年は前の人？
｢･･････釣り具屋さんを選べば良かった｣
ぼそりと言った言葉は、反応して欲しかったわけじゃないけど、無言になられたらそれはそれで困る。
いじめてるみたいになるから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 668人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ao(プロフ) - cocoroさん» cocoro様、わお！素敵なコメントありがとう〜！嬉しいです！やる気出ましたよー！まだしばらくは頑張れそうだから今後もお楽しみに！よろしくお願いいたします！ (2019年5月3日 9時) (
レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - keiさん» keiちゃんありがとう〜。動じなくって一言の重みがある。そうなんですよね〜、そこに惚れてるのです。こちらこそいつもありがとう！励みになってるよ。次も萌えられるよう頑張るね！ (2019年5月3日 9時) (レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - mizunaさん» mizuna様、恐れ多い最高の褒め言葉をありがとうございます。拙い文章で、まだまだ切磋琢磨が必要ですが、自信になります。ありがとうございます！私の理想と一緒で良かったです！これからもよろしくお願いします。 (2019年5月3日 9時) (レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - kikiさん» kiki様いつもありがとうございます！かっこいいのとゆるふわ、そうです、それが書きたくて。うふふ。令和も楽しみながら作って、自身も皆さんも癒せるといいなって思います。これからもよろしくお願いします！ (2019年5月3日 8時) (レス) id: 492f498e0a (このIDを非表示/違反報告)
cocoro(プロフ) - aoさ〜ん。もう「aoさんの大野さん」のない生活は考えられないよ。令和もよろしくです。aoさんが書き続ける限りずっと読者してます。 (2019年5月2日 21時) (レス) id: 8d2a7d356c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ao
| 作成日時：2019年4月18日 13時
