65 卒業式 ページ16
卒業式を終えた私は、男の子から告白を受けた。でももう前みたいに嘘はつかない。
｢好きな奴、いるの？｣
その質問に胸を張って大きく頷けるようになっていた。
生徒たちはみんな、卒業式が終わると自分がお世話になった場所にお礼の挨拶に向かうのがこの学校の通例で、私もマキちゃんと一緒に、最初に体育館に頭を下げに行き、食堂、トイレ、更衣室、順に回って行った。
マキちゃんは、数学の準備室にも廊下からそっと頭を下げていた。
｢A、美術室に行く？｣
｢うん｣
マキちゃんと一緒に美術室に入ると、いつもの匂いに安心して大きく深呼吸した。
美術部には、やる気のある新入生が8人も入って賑やかになっていた。
私が来るのを見越した後輩達が、黒板にチョークアートを描いてくれていてびっくりした。私がチアダンスを踊っている姿で、躍動的に描かれていた。
｢A、凄いね！｣
｢うん･･････｣
感動して目が潤んじゃった。
たくさんカメラに撮った後、黒板の隅に御礼を書き込んで、手に着いたチョークの粉を払った。
｢もう行く？｣
マキちゃんに頷いて、改めて教室に向かって頭を下げた時、ふと目に入った窓の外の白い煙り。
息をのむ。
あれ？目の錯覚かな？
｢A？｣
目の前で、また一つ上がるドーナツ型の煙。
嘘･･････。
私はマキちゃんを振り返った。
もう時効だと思って、マキちゃんには全部話し終わったところだった。先生とのこと。美術室の隠れ家のことも。窓の外を見たマキちゃんは目を見開き、私の背中を押した。
｢行きなよ！ A、凄い凄い！｣
興奮しているマキちゃんは顔を赤らめて、くしゃくしゃで、今にも泣き出しそうだった。
そんなマキちゃんに抱き着こうとして、私じゃないでしょって言われて再び背中を押されて、煙りの方へ体を向ける。
いろんな記憶、思い出を蘇らせながらたどり着いた窓の下にいたのは、紛れも無い大野先生で、柔らかな髪の頭のてっぺんを見た瞬間、私は嗚咽し、涙が止まらなくなって、手で顔を覆った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 322人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ao(プロフ) - cocoroさん» cocoro様、ありがとうございます。とっても励みになるお言葉、これからもこのスタイルで頑張っていいんだなって勇気を貰いました。ありがとうございました。新作もほんわか度は上がってますので、遊びに来てくださいね。 (2018年8月28日 8時) (
レス) id: e96312c6a0 (このIDを非表示/違反報告)
cocoro(プロフ) - aoさん。いつも智君のお話ありがとうございます。私はaoさんの創るお話が大好きです。やさしくて芯の強い登場人物達。お互いを思い合っている温かいお話に癒されています。また楽しみにしています。 (2018年8月25日 14時) (レス) id: 0e48c0adf3 (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - えみいさん» えみい様。コメントありがとうございます。今回で終了しましたが、また新作をご用意していますので、そちらにも遊びに来て下さいね。よろしくお願いいたします。 (2018年8月24日 6時) (レス) id: e96312c6a0 (このIDを非表示/違反報告)
えみい(プロフ) - 更新頑張ってください！！ (2018年8月23日 14時) (レス) id: 91c147309d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あお
| 作成日時：2018年7月28日 23時
