『ロンドンのお家』へ ページ9
母の持っている瓶から、
そして、恐る恐る熱い暖炉の中に入って。
「『ロンドンのお家』」
パラパラと足元に落とした。そしてギュウッと目をつむる。
ゴオッと炎が上がった。色は、はやり緑色。しかし、Aはおや？ と思った。燃えるように(実際に、燃えるのだから当然だ)熱いかと覚悟をしていたそれは、まるで温かいそよ風だ。驚いて目を開ける。
そこに広がっていたのは、緑色の炎らしい物の渦。回転しているのだろうか。
耳が聞こえなくなるほどの、轟音。
ハッキリ言って、気持ちが悪くなりそうだが我慢して目を開け続ける。
目の横を通り過ぎて行くのは、どれもぼやけていて、一瞬なので見にくいが、確かに暖炉、暖炉、暖炉！ たまに、その向こうの部屋も見た気がする。
暖炉、暖炉、暖炉、暖炉、暖炉、暖炉、暖炉――――……。そして――――……？
「う゛っ……」お腹から声を出した。
Aは勢いよく誰かに支えられた。せき込みながら、誰かと見てみれば、支えていたのは先に行っていた、父親だった。
「気分は？」
「これが、魔法なんだ……」
父親の問いには答えなかった。「ああ、普通……よりずっと悪いかも」――――今答えた。
音がして、母も
「よかった！ 皆到着していたのね」
母はピンピンしているようだ。―――――気が付かなかったが、父も。
父の腕から離れて、周りを見てみれば、そこは元々いた場所ではない。カントリー調の可愛らしい家具であふれかえっていて、温かみがある。
窓の外を見てみれば、反対側にも家々が建っていて、その間隔が日本よりもやや、狭い。建物のデザインだって、日本であったら目を引くような、これまたカントリー調のものだ。
「本当に……」
本当にロンドンへ来たんだ。
Aは呟く。
「本当に魔法はあったんだ……」
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年4月25日 18時
