女の子が去って ページ30
ハーマイオニーはハリーが名乗ると、ほんとに？ と聞き返し、本当に本人だとわかると、また。
「私、もちろんあなたのことを全部知っているわ。―――――参考書を二、三冊読んだの。あなたのこと、『近代魔法史』『黒魔術の栄枯盛衰』『二十世紀の魔法大事件』なんかに出てるわ」
またロクに息継ぎもせずにつらつらと述べる。ハリーが呆然としているのを見て、「まあ、知らなかったの」と逆に驚いたようだ。「私があなただったら、できるだけ全部調べるけど」
ハーマイオニーの演説は止まることを知らないようだ。すぐにどの寮に入りたいか、一番いいのはグリフィンドールで、自分は、そこかレイブンクローで迷っている、という様な事を一気に話した。
この間、ロン、A、そして蛙探しのネビルは完全なる空気だった。
「とにかく、もう行くわ。ネビルのカエルを探さなきゃ。三人とも着替えた方がいいわ。もうすぐ着くはずだから」
ハーマイオニーはそう言って、ネビルを連れて出て行った。その瞬間にシン、と静かになる。まるで嵐の後の様だ。
暫く呆然としていると、ロンが着替える代わりにポツリと呟いた。良く聞こえなかったが、あの子がいないところが良い、へぼ呪文め、など悪態をついていたのは確かである。
「君の兄さんたちってどこの寮なの？」ふと気が付いたハリーが聞いた。
「グリフィンドール」杖をトランクに投げ入れたロンはまた、落ち込んだようだった。
ロンの家は――――ロンはまだわからないが――――全員グリフィンドールだそうだ。そして、その分、自分がもしグリフィンドールじゃなかったら……ましてや、スリザリンだったら……と圧がかかっているらしい。
それにしても、とAは思う。それにしてもスリザリンの評判、なんか悪いなぁ。
「それで、大きい兄さんたちは卒業をしてから何してるの？」
「確かに。魔法使いってどういう仕事してるの？」
「チャーリーはルーマニアでドラゴンの研究。ビルはアフリカでなんかグリンゴッツの仕事をしてる」
グリンゴッツと言えば、あの銀行だ。あそこと言えば、小鬼の印象が強かったので、仏の魔法使いがいるのに驚いた。
ああ、と思いだしたようにロンは言う。
「グリンゴッツのこと、聞いた？ 『日刊預言者新聞』にベタベタでてるよ」
ハリーとロンが事も無げに話しているので、聞けない。『日刊預言者新聞』とはなんぞや、と。
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作者名：蒼使ヰ | 作成日時：2020年4月25日 18時
