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これはだめかな、となんとなく思った。
((俺、ナノの事、好きだよ))
 そう言ってくれたあの人を、俺は疑う気なんてない。
 『普通の人』みたいな感情もない俺に、そんなこと否定する様な権利なんてないんだ。
 ただ、ふぶさんが無事なら、それでいいと思った。
 ピンを抜いて放ったグレネードは爆発し、爆風と爆炎をまき散らす。
 その爆風に押し出され、俺の背はガラスを破った。
 重力に従い下降する身体は、酷く重くて、酷く遅くて。
 手を伸ばせば、今度こそ、見える気がしたんだ。その手が、掴める気が、したんだ。
 そう、ただの、そんな気がするだけ、だったのに。
 煙を突っ切って、青の髪が陽光を跳ね返す。
 あちこちにやけどを作ったまま、俺に手をのばす。
「ナノ―ッ!!」
「ふぶさん…っ!」
 伸ばされた手が、俺の手を掴んだ。
「……!」
「掴、んだ…っ!」
 引き寄せられ、抱きしめられる。
 下の道路を大型車が走る音が響いていく。
 ふぶさんの表情が一瞬驚きに満ちて、俺はふぶさんと下へ落ちた。
「ん、ぶっ」
「ぶはっ」
 下にあったのは藁だ。藁の山。
 何故、と周囲を見渡せば、大きなトラックの荷台だった。
「なんで、こんな所に…?」
 ふぶさんが頭の上の藁を払い落とし、俺を抱え上げる。
 それに驚いて、慌てておろしてもらおうと腕を動かした瞬間、肩に鈍い痛みが走った。
「……っ」
「ほらナノ、俺が抱えて降りるから任せて」
「…何だ、落ちてきたのはお前らか」
 腰に携えた刀を構えつつ、姿を見せたのは赤髪の青年。
「あろまさん…どうしてこっちに?」
「本陣を叩くのに手をかしてくれっていうのと、お前をFBが見失ったっつーから来たんだよ。……まぁ、けがはあっても生きててよかった」
「…は、い。すみませんでした」
「構わねぇよ。とっとと降りてこい。手当するから」
 ふぶさんは俺を抱えたまま荷台を降りた。
 荷台の扉から医療用具を下ろし、あろまさんがすでに治療の準備を始めていて、俺は少しだけたじろぐ。
「あ、あの、作戦の方は…」
「あん? あぁ、すぐ行く。…FBは、」
 あろまさんがふぶさんに何かを言おうとして、止まった。
 通信機に手を当ててきっくんか、えおさんに連絡を入れる。
 終わればすぐに刀の柄を握り、それを引き抜く。
「あろまさん?」
「おれ、参戦してくるわ。FBとシィナノルトでこっち頼むぞ」
 俺があろまさんに何かを言う前に、あろまさんには走り去られてしまった。

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長閑(プロフ) - 麒麟さん» 書いてる話が男主なんでどうしてもそういうふうに傾いてっちゃうんですよね、なんででしょう(すっとぼけ←) 読んでくださってありがとうございました! (2015年6月28日 19時) (レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
麒麟 - 面白いです!これはホモォ・・・「(^o ^)」な展開ですかね・・・! (2015年6月28日 18時) (レス) id: a165517e8f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長閑 | 作成日時:2015年2月28日 3時

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