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※FB視点
「あぁ…ナノとはぐれちゃった…」
建物の中の地図はすでに頭に入っている。
俺はのろのろと廊下を歩き、先生のいる医務室の扉を叩いた。
「先生、ナノ知らないですかー?」
「あ? ナノ? ナノなんてヤツいたか?」
「…あ、シィナノルト副隊長…」
「あぁ、成程な。……いや、知らねぇけど…お前、なんで1人なんだ」
それが、はぐれちゃって。
軽い調子で返したら、先生は態度を一転させ、険しい表情を浮かべる。
「いますぐ追いつけ! 早く!」
「…え?」
「いいから! とっとと探せばか!」
「は、はい」
先生に急かされ、俺は医務室をでて走る。
なんであんなに必死なんだ?
そう思いながら走っていれば、丁度、数人の男に囲まれたナノが見えた。
「ナノ…っ」
「お前、特別配属されたからっていい気になって」
「…ただの僻みじゃないですか…」
ナノの冷えきった声が聞こえて、俺は思わず駆け寄ろうとした足を止める。
初めてナノと会った時のように冷えきった声。いいや、それよりも冷えている様な気がした。
俺は壁に隠れて、耳をすませる。
「……あの総帥の息子に眼かけられた程度で、よくそんな口聞く。さすが、クズが多いって噂の西軍兵だっただけはある」
「……だからなんです? 正面から言ってくる事には敬意を表しますが、実力がない事を他人のせいにしないでください」
msspは、東軍の中でも最強と呼ばれる実力者の粋を集めた小隊だ。
だからこそ他の部隊と区分けされ、msspと一般部隊とまで呼ばれる存在なのだ。
今更、俺はmsspという小隊の権威の大きさを知った。
(でも…)
だからといって、俺が立ち止まる事はない。
ナノを、助けないと。
男が拳を振り上げている。咄嗟に、俺は腰に指していた投擲ナイフを投げた。
ナイフは男の服の袖を巻き込んで、壁に突き刺さる。
「…そこまで」
「ふぶさん…? どうして、ここに」
「お前…新参兵か!」
「ワタクシが、新参兵のFB777です! …『うちの』副隊長さんに用があってきました! 副隊長、いいですか?」
「……い、いいですけど…」
小走りで俺の方に来たナノに笑みを向け、軽く肩に手を添えて踵を返す。
肩越しに振り返って、男達を見た。
「じゃあ。……失礼します」
声は特に変えないまま、凄んだ。
男達の怯えたような眼が俺を見る。
それに満足して、歩き出した。
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長閑(プロフ) - 麒麟さん» 書いてる話が男主なんでどうしてもそういうふうに傾いてっちゃうんですよね、なんででしょう(すっとぼけ←) 読んでくださってありがとうございました! (2015年6月28日 19時) (レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
麒麟 - 面白いです!これはホモォ・・・「(^o ^)」な展開ですかね・・・! (2015年6月28日 18時) (レス) id: a165517e8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長閑 | 作成日時:2015年2月28日 3時