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「……あの、えっと…良かったの、ナノ?」
 控えめな声で俺に聞くふぶさんは、どこか申し訳ないという顔をしている。
「構いませんよ。…たぶん、まぁ…断れないでしょうし」
「…そ、そっか。……なんか、本当ごめん…」
 もう少し覚えが良ければいいんだけど、とふぶさんが言う。
 別にそんな事気にしないのに。
「気にしませんよ、そんな事。傭兵と軍隊じゃ規範も作りも違います。戸惑うのは当然ですよ」
「……」
「……なんです?」
 きょとんとしたふぶさんに、俺は首を傾げた。
 俺の問いを、ふぶさんは照れ笑いで答える。
「いや…なんか、ちょっと嬉しくて」
「嬉しいってなんですか…。別に普通でしょう」
「…ナノが気にかけてくれたなーって」
「そんなに嬉しい事ですかね…」
 よくわからないとばかりに肩を竦め、俺はふぶさんを見る。
 彼はサングラスをかけ直しながら、「あはは」と笑った。
「なんか、ナノだからかな。嬉しいよ」
「……そう、ですか。よくわかりませんけど」
 俺がざっくりとそう言い放てば、ふぶさんはやはり笑う。
 快活な笑い声が廊下に響く。
「ふぶさんは、本当によく笑いますね」
「あ…、う、うるさい? うるさいってよく言われちゃうんだけど…」
 さっきも先生に言われたし。
 そう言って、ふぶさんは少ししょんぼりとした表情を浮かべる。
 そんなふぶさんを、俺は少し屈ませた。
 困惑した様な表情を浮かべたふぶさんの髪を、俺はくしゃくしゃと掻きまぜる。
「気にしなくていいですよ、俺といる時は」
「……ありがとね、ナノ」
 一瞬きょとんとしたふぶさんが、ぱっと表情を明るくした。
「いえ。…俺は、ふぶさんの笑顔好きですよ」
「……え、えと…」
「俺にはないものなので」
 俺は、笑わない。少しでも笑えれば、もう少し愛想よく出来るのだろうけれど。
 そう考えていたら、ふぶさんはしゃきっと立ち上がり、俺の頭を撫で返してくる。
「俺はナノと一緒にいるの好き! ナノと話すの好きだよ」
「……そう、ですか」
「はい!」
 にこにこと笑うふぶさんの笑顔。思わず、肩のちからが抜ける。
「……ありがとうございます」
 ふぶさんは一瞬びっくりしたような顔をして、また笑った。

俺と新参兵、事情 1→←5



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長閑(プロフ) - 麒麟さん» 書いてる話が男主なんでどうしてもそういうふうに傾いてっちゃうんですよね、なんででしょう(すっとぼけ←) 読んでくださってありがとうございました! (2015年6月28日 19時) (レス) id: 83e5a293f5 (このIDを非表示/違反報告)
麒麟 - 面白いです!これはホモォ・・・「(^o ^)」な展開ですかね・・・! (2015年6月28日 18時) (レス) id: a165517e8f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長閑 | 作成日時:2015年2月28日 3時

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