お前たちがおれ達の希望になるのだろうと ※Ｆ９ ページ6
「…言わなくて良かったのかよ」
ジュードが出ていった部屋で、えおえおが顔を顰めておれを見た。
「い〜って。余計な事は言わなくていーんだよ」
「…確かに、言いたくはないけど…」
「いーんだよ。言わなくて」
なおも食い下がるえおえおを一蹴しておれは頬杖をつく。
上層部におれが言われたのは、減給だけではない。もちろんネチネチ嫌味を言われたのは事実だが、嫌味の内容は一緒にいたえおえおじゃなくても正直腸が煮える思いだった。
『実力があるとはいえ、あれは失敗者だ。同じ轍を踏ませるな』
『こちら側にとって役に立たない。だが実力があるから任せているという事を忘れるな』
「…ジュードくんは結局抱え込んじまうからよォ。だからおれとしては、あーいうクソ共に関わらせたくねーのよ」
「…ジュードは、何で自分の事をそんな…」
きっくんが悔しそうにしておれを見る。言葉に続いて、3人の視線もおれに集まった。
「まあ…複雑だからな、ジュードは」
ジュードが軍をやめる決定的な分岐点になったのは、家の事だった。だがそれ以前から、強過ぎる自身の才に苦しめられ、自分の行いに、倒れ伏す仲間達に、心を痛めていた。
おれと同じく才能こそはあった。しかしジュードという男は戦場に心を擦り減らすばかりで、兵士としては一切の才能を持ち合わせていなかった。
それをおれは、ジュードの心が崩れ落ち、瓦礫と化すまで気づかなかったのだ。
あの時、真っ赤な瓦礫に腰掛けた彼の表情に、この男の心を殺したのは、紛う事なく戦場と、家と、おれなのだと思い知らされた。
それから必死に心を砕くようにした。それでももう無駄だった。抜け殻の様になって義務的に呼吸を繰り返し、死んだように眠る友人に、どう侘びたら良いのか、おれにはわからなかった。
だからおれは決めた。本当の本当に、ジュードと共に、同じその果てまで。
「…それは、おれらには言えねぇの？」
あろまの言葉。真剣な、からかう素振りなど無い表情に、おれは自嘲気味に肩を竦める。
「おれからは言えねーな。当事者ではあるが、おれの事じゃねーし」
4人は難しそうに表情を歪める。
おれらはこいつらを兵士に育て上げる為にいる。支える側であって、支えられる側ではない。
「ま、気になんならアイツに直接聞くこったな」
(そうしてできれば、アイツを救ってやってくれ)
おれにはおそらくできないことだ。
少しばかり自嘲気味に笑っておれは肩を竦めた。
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長閑(プロフ) - 代口さん» 初めまして、コメントありがとうございます！当作品を読んでいただきありがとうございます。楽しんでいただけて嬉しいです！趣味詰め詰め小説ですが今後もゆっくり更新していきます。よろしくお願いします〜！ (2022年8月9日 1時) (
レス) id: 4a86d0b1da (このIDを非表示/違反報告)
代口 - 初めまして、コメント失礼します。話に引き込まれて最後まで読んでしまいました、とても素敵な作品と出会えて良かったです。今後の更新も楽しみにしています。 (2022年8月5日 6時) (レス) id: fb96c304db (このIDを非表示/違反報告)
長閑(プロフ) - 陵さん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけて嬉しいです！お話は短編の方にその後の話としてあげようと考えていますのでしばしお待ち下さい！読んでくださりありがとうございました！ゆっくりですが今後も更新していきます。よろしくお願いしますー！ (2022年5月3日 1時) (レス) id: 4a86d0b1da (このIDを非表示/違反報告)
陵(プロフ) - コメント失礼します！完結おめでとうございます！！とても素敵な作品に出会えて幸せです、、！5人のお話や脳筋ぶち破り話（？）も楽しみにしています！！ (2022年5月2日 2時) (レス) @page50 id: ef30949f28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長閑 | 作成日時：2020年1月26日 3時
