【ＭＳＳＰ軍パロ】黄麟雷紅【男主】

ザ・アウトブレイク・オブ・ウォー・オブ・クロージャー　※Ｋ ページ1

「…ようやく、か」
　俺はそう呟いて、長くなった髪を軽く摘んだ。
　机の上に並べたのは、４つのファイルで、そのうち３つはすでに終戦となった戦争の物だった。
　青、赤、緑。黄。
　それぞれに色分けされ、丁寧に装丁されたファイルを手に取り、ぺらぺらと意味もなく紙をめくっていく。
「……はぁ」
　重たいファイルを机の上に置き直して、気だるく座った椅子の背もたれに体重を預ける。
　ふと、視線を向けた先に見えた写真立てを、懐かしい眼で見つめた。
「……ようやくだ。なぁ…」
　紡ごうとした言葉を口の中で転がして、そのまま呑み込む。
　言っても構わない筈だ。関係も何もない。じゃあ、何故そのまま言わないでおこうとするのか。
　自分の事の筈なのに、何故か俺のことではない様で、妙に気持ちが悪い。
　再びため息を吐き、俺は写真立てから視線を逸らした。
　幾つか立てられた写真立てには、同じ人物が写っている。
　笑っていたり、怒っていたり。何の変哲もない日常の写真。
　ただ、１つだけ。幾つもある写真立ての中で、ただひとつだけ伏せられているものがある。
「……」
　伏せた写真立ての縁に視線を向け、俺はゆっくりと視線を外し、掌に視線を向けた。
(…あの日、気付かなければ)
　まだ、マシだったのかもしれない。
　そう思えど、俺は未だそれに納得できずにいるようだ。
「…こんな所で今更考えても、もう意味ないってわかってるんだけどなー」
　胸に飾られた称号。壁に飾られた賞状の数々。
　こんな彩られた称号なんかより価値のあるものはすでに消えた。
『きっくん、今いいか』
「あろま。…いいよ、どうしたの」
　通信機の向こうから聞こえた聞き慣れた声。
　そしてその後ろで騒ぎまくる声と、それをあしらう声も聞こえた。
『うるっせぇ、黙ってろクズ！ …とにかく、連合軍の方に動きがあったってＰ*suKEが言ってる。出撃の指示頼む』
「…んー、了解」
『頼む。って、おいこらふぶてめぇこら！ 何勝手にえおえおと一緒になってピザとプリン食い始めてんだクズ共が！！』
　ぶつん、と通信が切れて、相変わらずだなぁと苦笑交じりに俺は立ち上がる。
　椅子にかけた将軍としての威厳を込めたコートを羽織、部屋の写真立てを一瞥した。
「……」
　小さく言葉を紡ごうとして、また霧散した言葉を息とともに吐き出し、扉を開けた。

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