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『もうすっかり冬ですね』
「そうやなあ」
お腹もふくれて、それから数原さんの想いも知って、色々とお腹がいっぱいになったところで私たちは店を出て夜の街を歩く。
何度見ても、彼の横顔が綺麗だ。
『...数原さん、あっちですよね?』
「もう、何度言ったら通じんねん。夜遅いから送るってば。」
『......ありがとうございます、』
頭をくしゃっとされて、お前もちゃんと女の子やもんね、なんて。
こういうときは女の子扱い。
この時に私の想いは溢れて止まらなかった。
だから、こんなことを言ってしまったんだと思う。
片想いの、悪足掻き。
『あの、数原さんっ』
「ん?」
『...数原さんがとっても一途なことは、知ってます。』
『でもそれに負けないくらい、私だって一途です』
『私、数原さんが好き...っ』
「......な、に...急に、」
『わかってます...でも私数原さんの、篠田さんを見てるときの悲しそうな顔見たくない......っ』
『私、数原さんの笑顔が大好きなんです。だから、私が数原さんを幸せにしたい。』
『私と1ヶ月付き合ってください。それでも篠田さんが忘れられなかったら諦めます。』
「っふ、随分と男前やなあ...」
頭を再び撫でられ、俯いていた顔を上げると彼は少し困ったような、照れたような笑顔で私を見ていた。
私は、数原さんが笑顔になれるならそれでいい。
そして、その理由が私なら。
「ええよ、1ヶ月ね。」
「あいつのこと、忘れさせて?」
私の悪足掻きが、こうして数原さんと新しい関係を築いたのだ。
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みん(プロフ) - 素晴らしい文章力で、引き込まれます!ありがとうございます! (2019年5月20日 9時) (レス) id: f912ed750b (このIDを非表示/違反報告)
ARM26(プロフ) - すごく好きです…!こんなに引き込まれて一気に読んだのは初めてです!これから続編読むのですが楽しみ半分、終わりに近づいてる寂しさ半分…終わりまで楽しませていただきます! (2019年1月18日 21時) (レス) id: 6024ec169a (このIDを非表示/違反報告)
GENE love - 葵子さん» 賞味期限2も読ませてもらいました! ほんまに泣きました。 ほんまに体験してるみたいな気分になって切なくなって感動です! 頑張ってください! (2019年1月13日 20時) (レス) id: 1e4df9a365 (このIDを非表示/違反報告)
釈迦で~す推し。(プロフ) - 愛故にを読んでるとき号泣してたので、ハンカチ用意しときます。真顔 (2019年1月13日 14時) (レス) id: 52e976e0eb (このIDを非表示/違反報告)
葵子(プロフ) - 釈迦で~す推し。さん» これからもっと切なく......(;Д;)(;Д;)← (2019年1月13日 14時) (レス) id: 6b76cfea77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵子 | 作成日時:2018年11月25日 18時