【黒バス】600円(税別)で買える君【黛千尋】 (ページ8)

今日:7 hit、昨日:7 hit、合計:141 hit

8冊目ページ8

.

そもそも根本的に考えたら分かる事だが、
俺は虐められたりからかわれたりする以前に誰からも気付かれもしないような奴だし、

仮に現実にそんな漫画みてぇな罰ゲームをやる奴が存在したとしても少なくとも居ないも同然の俺なんかを対象にはしないだろう。

「なら、俺のどこが良かったんだよ。
…自分で言いたかねぇが俺より良い奴なんざその辺にいくらでも居ただろ」

『どこ、って言われても一言じゃ…。
…話してもいいけどつまらないだろうし長くなると思う』

「聞こう」

『聞くんだ…』

「興味あんだよ。……誰かに好かれた事とかねぇから」

やっと観念したのか(人1)は一度深くため息を着くと
ぽつぽつとゆっくり語り始めた。

.

俺は昔から教室で本ばかり読んでいるような、
……いわゆる陰キャ側の人間で、その上に影まで薄かった。

それは高校でも健在で高三になっても俺をすぐ覚えてるような奴なんてまず居ないくらいだった。

それが俺の日常だったのだが、

そんな中で、(人1)は俺を見つけたらしい。

『教卓の中に名簿あるでしょ？
何となく友達とそれ見てて……その時に黛千尋っていう名前を見たの。

三年にもなると名前を聞いて知らない事ってなかったけど
黛くんだけは顔が浮かばなくて、
それに千尋って女の子かなって思ってたの』

「覚えられない事なんざ数え切れないほどあるが…
…女みたいな名前ってのは初めて言われたな」

言われてみると、千尋という名前は女っぽいのかもしれない。
だからといって別に自分の名前に文句も何も無いけれど。

(人1)はそれから俺を気にするようになったらしい。
俺の姿を見つけて、名前を覚えて、俺を覚えてくれた。

『授業中、本読んでても先生に注意されないのとか
逆に手あげてても気づかれて無かったりとか
それで諦めて不機嫌に頬杖ついて窓の外眺める横顔とか』

「ディスってんじゃねぇか。
てか俺じゃなくて授業に集中しろよ…」

『と、とにかく、そういう所を目で追ってくうちに惹かれていったの。
だからどこが好きとか言われても答えられない…』

「……ふーん」

聞いておいて何だが、やっぱり理解出来なかった。

てか、そもそも俺みたいな影薄いのを
さも当たり前のように目で追えるのがすごいっつーか。