3冊目 ページ3
.
利害の一致。この言葉に尽きるだろう。
指でタイトルをなぞりながら
どのラノベにしようかと本棚を物色する。
学校の屋上から本屋に着くまで…
着いて今に至るまで会話は一つも無いままに。
……それから30分ほど考えてやっと決めると
今読んでるラノベの続きを手に取ってそれを彼女に渡した。
「じゃあこれ」
「あっ、はい…!」
俺からラノベを受け取るや否や、
彼女はすぐにレジでお会計をして戻ってきた。
渡された袋の中には先程のラノベ。
…ここまで来といて嘘だとは思ってなかったが
それにしたって本気で買ってきやがった。
「…マジかよ」
一度ため息を着いてから、やっぱ提案に乗るんじゃなかったかと少し後悔する。
罪悪感とかそういうんじゃなくて
ここまでしてラノベを欲する自分が嫌になってきた。
とりあえず店を出てから読み途中の本を開いて歩き出すと彼女は変わらず俺に着いてくる。
いやこれから寮に帰るんだけど。こいつも寮なのか？
「あの…手繋いでもいいですか？」
いや、違う。
そっちの願いを叶えたんだからこっちも叶えろって事か。
「は？嫌。」
「え、嫌!？」
「っつか同級生なんだろ。敬語いい加減ウゼェんだよ」
「ご、めん」
俺はもう一度ため息を着くとラノベを読みながら歩き出す。
月夜に照らされながら1ページ読んで
チラッと隣を見ると少し落ち込んだように俯いていた。
「……手塞がれると本読めねぇんだよ。腕にしろ」
「!…うん!」
そして彼女は控えめに俺の腕に触れた。
…なんでほぼ初対面の女と腕組まにゃならんのか。
まあラノベ買ってもらったんだし仕方ない。
コイツも邪魔しないようにと思ったのか
寮に着くまで黙って隣を歩いてくれた。
「じゃあな」
本から目を逸らさずにそう言って控えめに腕を払うと
少し後ろから、彼女の控えめな声が聞こえた。
「明日、一緒に登校しても良いかな」
「何でだよ」
「恋人、だから？」
「……」
俺は本を閉じてから角でその額を小突いた。
小さな「いたっ」という声の後で、
手で額を押さえる彼女の頭に今度は手を乗せる。
「恋人じゃなくても登下校くらいすんだろ」
「そ、それは」
踵を寮の方に返すと、
ラノベごと手を振りながら小さく「また明日六時な」と。
寮に入る背に嬉しそうな返事が聞こえたのを最後に俺は彼女と別れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：由麻 | 作成日時：2024年3月26日 0時
