君にロックオン！【青根高伸】

8.日常と非日常 ページ8

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「武居くん！！ここの数字間違ってるじゃないか！」



ある日、私は些細なミスで係長につかまり
長々と説教をされていた。
(うー。もう10分はたったんじゃないか……よくこんなにずっと怒っていられるなぁ)



「もういい。仕事に戻れ」




ガミガミ上司の元で働くのがすごくストレスだった。



「武居さん、お疲れ」



私の席の前を通った真坂さんが、机にチョコレートを置いていった。



「糖分取って疲れを癒してね」



少し前に、金谷さんは結婚した。
相手は真坂さんではない。
私たちの知らない人だ。
同期の女の子たちは真坂さんが開放された、なんて喜んでいたけど。



「なにー？真坂ちゃん、武居さんに優しくなーい？」



金谷さんが真坂さんにそう言っていた。
金谷さんのお気に入りだっていうことには変わりはないらしい。
それとは関係なく、私は金谷さんにもあんまり好かれてないみたい。
学生時代とは違って、仕事だから苦手な人ともうまくやらないといけない。





「ねえ。来週末合コンするんだけど、武居さんも参加しない？」



同期の江藤さんに声をかけられた。



「うーん………私は、ちょっと」
「興味ないの？」
「う、うん……」



私には好きな人がいる。
あれから、電話もラインも一度もしたことはなかった。
それでも、彼の番号は私の携帯に登録されている。
それだけで安心できたんだ。
また会える。そう言ってくれた。



「いい感じの人でもいるの？聞きたい〜」



最近は、同期で一番仲がいい経理課の歩ちゃんとお昼を食べている。
高卒で入社したから、私より年下だ。
彼女もいつも、手作り弁当。
同じ高校だった男の子と付き合っていて
他の同期の子たちより、少し幼くて地味だけど真面目な女の子だ。



「好きな人がいるんだ。通勤ラッシュで痴漢にあったときに、助けてもらって……」

「えっ！！すごい！ドラマチック！！」



歩ちゃんは、素朴な顔立ちにそぐわない
首筋に赤い模様をよく付けている。
束縛が激しい彼氏……なんだな。

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