13.社会の波に揉まれて ページ13
.
17時。定時で退社し、駅へ向かう途中に青根くんに電話をしてみた。
けれど彼は出なかった。
こんなもやもやした気分の時は、特に君に会いたいと思ってしまう。
言葉は少ないけど、落ち着いていて迷いのない佇まい。
しょうもない大人の世界のしがらみとか
関係なく生きている男の子だろうな。
仕方がないので家に帰ろうとした時
着信音が鳴った。
青根くんだった。
「もしもし……あの、電話しちゃってごめんね。
あの……君に、会いたくなって」
初めて電話で話す声は
普段の会話よりもっと低くて聞き取りづらかった。
「6時半まで部活なんだ。終わったら……そっちに行く」
そう言われて、彼が部活動をしていることも初めて知った。
体格いいもんね。運動部かな。
“終わったら、そっちに行く”
そんな彼氏のような返事に、たまらなく幸せを感じた。
--------
青根side
「今の誰よ?」
二口がニヤニヤしながら携帯の画面を覗き込もうとしたので
俺は直ぐに鞄にしまいこんだ。
「彼女とかじゃないだろうなー?」
………彼女。ではない。
あの人は俺のなんなんだろうか。
けれど、会いたいと言われ会いに行かない選択肢はない。
「そういや鎌先さん、中曽根先輩と別れたらしいね。同じ職場の女の子に惚れちゃったとか」
卒業した鎌先さんは、俺の尊敬するバレー部の先輩だ。
高校時代からずっと付き合っていた彼女とうまくいってないらしいと聞いていた。
「あんなに仲良かったのにな。ってか鎌先さんが中曽根さんにベタ惚れだったのに。
別々になっちゃうとダメなもんかね?」
二口はスポーツドリンクを飲み干して立ち上がった。
「社会人もいろいろ大変だよな」
電車で痴漢にあったり、飲み会で強くない酒を飲んで酔っぱらったり
昔から付き合っていた彼女から、心変わりしてしまったり。
社会人って言うのは、俺が思っているよりいろいろと複雑で大変らしい。
そんな生活の中で、特におもしろみのある話も出来ないただの高校生の俺なんかに
彼女は、なんで会いたいと思ってくれるのだろうか。
176人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
茜(プロフ) - ねこみやさん» ありがとうございます♡ (2月8日 23時) (レス) id: 42242e81de (このIDを非表示/違反報告)
ねこみや(プロフ) - まじで最後が尊すぎてめちゃくちゃ涙出ました尊すぎて( ; ; ) (8月27日 20時) (レス) @page41 id: 3ca32de087 (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - みーちゃんさん» とても嬉しいお言葉ありがとうございます! (2023年4月26日 1時) (レス) id: 42242e81de (このIDを非表示/違反報告)
みーちゃん(プロフ) - 泣きました。 (2023年4月26日 0時) (レス) @page41 id: 0002bb722b (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - mooさん» お褒めのコメントありがとうございます! (2022年6月26日 23時) (レス) id: 42242e81de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:茜 | 作成日時:2018年6月14日 19時