13‐反則勝ちはだめです ページ14
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開店予定時間まで、あと1時間。
残っているタスクは山ほどある。
他の寮生が出勤してくるのも1時間後だ。
とりあえず、開店までに必ず終わらせておくべき事を終わらせれば、あとは開店後にでもできる。
店内清掃とレジの起動、テーブルセッティングだけ、1時間以内に終わらせればきっと間に合う筈。
「いつもお世話になってる分、私がここでお礼を返そう」
店前と店内を軽く清掃して、有線を付け音楽を流す。
私が慌ただしく準備に走っている中、3人はただ茫然と私の様子を目で追いかけているようだった。
その目は何だか申し訳なさそうに見える。
だから、大丈夫ですよ、の意味も込めて笑っておいた。
「…………っふう、何とか間に合った!」
「Aさん、大分調子が戻ってきました
本当に何から何まですみません」
「いえ、いつもお世話になりっぱなしだから!
アズール先輩、まだ休んでいて大丈夫ですよ?」
「そういうわけにもいきません
ですが本当に殆ど一人で開店準備を終わらせて………正直驚いていますよ」
「本当に? もっと褒めて下さい」
「はいはい。今回ばかりは感謝していますよ」
開店予定5分前。ぱらぱらと出勤して来てくれた他の寮生の人たちとも一緒に開店準備を何とか終わらせられた。
まだ若干青い顔したアズール先輩がむくりと起き上がって首にタオルを巻きながらふらりと立つ。
ちらりと見ると、アズールの前に、もう涼しい顔して座っているジェイド先輩と、いまだに桶に足を突っ込んで寝そべるフロイド先輩を奥に確認した。
「さ、それでは皆さん。今日からサマーホリデーが始まります。
客足は休日の倍だと思ってください。一人ひとり、気を抜かず、そしてセールストークも忘れずに。それでは、本日も一日頑張りましょう」
1時間前と本当に同じ人なのか疑うレベルで、いつものアズール先輩が完成していた。
この人はいつ気が抜けるんだろう………。
それと同時に、1時間前の彼の情けない姿を見ても怒られなかった事に、若干嬉しさも感じている。
それぞれが自分のポジションに着いて準備をする中、ソファの近くに居た私は、くい、と軽い力で誰かに服の背中側の裾を引っ張られた。
「フロイド先輩?」
「………なーんか、オレおかしいのかも」
「どうしたんですか? どっか痛い?」
「んーん、………」
「Aのその髪、超ドキドキする」
ポニーテールの髪の束を、大きな手が引き寄せた。
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おそらまめ(プロフ) - 森Shizuku?さん» コメントありがとうございます!高校生の時のあの青春って本当に素敵ですよね。その通りです、10話のタイトルはエースの言葉を代弁しました!何度もご覧いただき光栄です…。本当にありがとうございます! (2021年10月6日 11時) (レス) @page11 id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
森Shizuku?(プロフ) - このお話、何度読んでも素敵です。10話のところってエースの言葉なんですかね。深いし、みんなそれなりに高校生してるなと思いました! (2021年10月1日 20時) (レス) id: 7c267cd787 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 智真さん» 智真様、完結のお祝いありがとうございます!そうなんです、男子高校生をやってるフロイドくんが書きたかったんです…!そう言って頂けて感激です!監督生と2人の間に何があったかは、ご想像にお任せします(笑) (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 華のフロランタンさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて嬉しいです(^^)また何かご縁がございましたらどこかでお会いしましょう! (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - モブサイコ100さん» 最後までご愛読ありがとうございます!オクタは本当に素敵な3人なので絶大な人気ですよね…!ここは沢山素敵な作品がございますが、読者様にとってこの作品が心に残る作品であれば幸いです(^^) (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年8月3日 1時