11-だって好きなんだもん ページ12
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何でよ。フロイド先輩には、ユウちゃんがいる癖に。
変な時だけこうして抱きついてきて。
ばか、……馬鹿。好きなんだよ、もう。
「先輩、今まで冷たかったじゃないですか」
「ごめん。許して。Aとどう接したら良いか分かんなかった」
「ちゃんと今まで通り、話してくれるんですよね」
「うん。……言われたから」
誰に? そんな事を思ったけど、大方アズール先輩だろうな、と安直に頭を動かす。
そうは言う私も、緊張と嬉しさがフロイド先輩に伝わらない様に精一杯だった。
変に体が硬直して、面白いくらいに感情のない声で喋った。
それでもフロイド先輩は弱々しく優しい声で、私に返事する。
「それじゃあ、仲直りしましょう」
「うん」
「もう冷たくしないで下さいね!」
「うん」
「……これからは、また、前みたいに」
「うん」
後ろを振り返るのを阻止するかの様にフロイド先輩の回す手が強くなった。
おかげでフロイド先輩の顔が見れない。
__それから一体何分この状態だったのか。
私は唯一触れられる、体に回されたフロイド先輩の両腕に手を置いてじっとこの恥ずかしさに耐えていた。
漸く緩まった腕に、そっと顔を上げると、いつも通り、……というか、ジェイド先輩達に見せている様な顔つきでフロイド先輩は笑いかけてくれた。
「明日からいっぱいバイト頑張ろうねえ」
「先輩、ちゃんとバイト行くんですね!」
「でしょ? もっと褒めて〜」
そう言ったフロイド先輩の顔は赤い。
それは単なる照れとかじゃなくて、熱に当てられたような赤さだ。
そういえば、さっき触れた両腕は指先まで冷たかった。
もしかして先輩、熱でもあるんじゃ。
……まさかね。私の思い込み過ぎだ。
「フロイド先輩ー!」
「あれ、Aもいたのか。エースは?」
「ユウちゃん、デュース。エースは先に帰ったよ」
「…急に居なくなるから悲しかったです、フロイド先輩」
「んぁー?」
校庭から二人の声が聞こえた。
こちらに駆け寄ってくるなり、ユウちゃんはフロイド先輩の服の裾をキュ、と握る。
私だけを見てくれていたフロイド先輩は、もうユウちゃんのものだ。
…………そうだ。フロイド先輩は気まぐれだから。こうして私に優しくしてくれたのも、全部…気まぐれだ。
「そういうのウザい。A、帰ろ」
「……っは、い」
それでも、差し伸べてくれた先輩の手を取る事に、優越感を感じていた。
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おそらまめ(プロフ) - 森Shizuku?さん» コメントありがとうございます!高校生の時のあの青春って本当に素敵ですよね。その通りです、10話のタイトルはエースの言葉を代弁しました!何度もご覧いただき光栄です…。本当にありがとうございます! (2021年10月6日 11時) (レス) @page11 id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
森Shizuku?(プロフ) - このお話、何度読んでも素敵です。10話のところってエースの言葉なんですかね。深いし、みんなそれなりに高校生してるなと思いました! (2021年10月1日 20時) (レス) id: 7c267cd787 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 智真さん» 智真様、完結のお祝いありがとうございます!そうなんです、男子高校生をやってるフロイドくんが書きたかったんです…!そう言って頂けて感激です!監督生と2人の間に何があったかは、ご想像にお任せします(笑) (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 華のフロランタンさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて嬉しいです(^^)また何かご縁がございましたらどこかでお会いしましょう! (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - モブサイコ100さん» 最後までご愛読ありがとうございます!オクタは本当に素敵な3人なので絶大な人気ですよね…!ここは沢山素敵な作品がございますが、読者様にとってこの作品が心に残る作品であれば幸いです(^^) (2020年8月26日 23時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年8月3日 1時