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＊
再会したときのニノも『どうしてワタクシに連絡のひとつもよこさなかったんですか？』っていっていた。
あのころ何度か電話してみようとこころみてはいたけれど、いつもこわくなってしまっていたんだ。
「カズくんさ、ずっとまってたみたいよー」
「なんで？
わたしに用事なんか…」
ニノとゲンさんがどのくらいの頻度で連絡をとりあっているのかはわからない。
「Aちゃんに用事があったから、まってたんだってよー」
ゲンさんがなにをどこまでニノにきいているかもしるところではない。
「サトシくんからの伝言があるっつってな」
「…伝言？」
「一刻もはやくつたえたかったみたいだけど、いくらまってもAちゃんから電話こないからカズくんなげいてたさー」
ゲンさんにきくのもおかしいと思ったが、わたしのくちは勝手にうごいていた。
「その伝言て…？」
「そりゃサトシくんがAちゃんにあいたがってるってことよー」
は…？
智くんはいってた。
『さいごにまた、にげちゃった』って。
東京にもどってたったの１ヶ月でなにかこころがわりすることがあったの？
わたしにあって、どうするつもりだったの？
だって、あのときのわたしたちじゃなにも…
わたしがむむむとくちをへの字にまげていると、ゲンさんはつづけた。
「理屈ぬきにそばにいたいひとはいるものだからなー」
すると、タイミングよくキッチンから奥さんがでてきた。
「あら、たまにはいいこというのね」
奥さんはそういうとエプロンで手をふきながらわたしの正面に腰をおろした。
「サトシくんは、むずかしいこと考えるのやめて自分の直感でうごきたかったんじゃない？」
＊
こわかったんでしょ？
手をふりはらわれることが、手をはなすことよりこわくって。
だから、またにげたんでしょ？
自分のことばっか考えてたからなんでしょ？
…ちがう。
それはわたしも、だ。
わたしは自分のことばっか考えてた。
もしつぎがあるならきっと連絡先をきかれていたか、おしえられていたはずって思いこんで。
街でみかけるポスターや広告のまえでとほうにくれて、自分と智くんの距離をどんどん遠ざけて。
自分にしばられてうごけなくなっていた。
きっとそんなわたしに気がついていたんだ。
だから。
「バカなのはわたしだよ」
縁側にあおむけにねころぶと、わたしは頭上をとびかうながれ星をひたすらかぞえつづけた。
＊
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
