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＊
自宅に帰ると早々にわたしはテレビのまえにすわり、デッキにＤＶＤをつっこんだ。
そのＤＶＤはニノから頂戴したもので、今年の夏におこなわれたコンサートが収録されている。
ニノは発売まえのそのＤＶＤをわたしにさしだすといった。
「Aさんもきたらよかったのに」
わたしはこれまでもコンサートがおこなわれるたびにおさそいをうけていた。
が、毎回ことわりつづけている。
「いいの、いいの
嵐のコンサートのチケットってとるのすらたいへんなんでしょ？」
「Aさんの席くらいよゆうで用意しますよ」
「そういう問題じゃないし」
何度もくりかえしてきたやりとり。
ニノはほおづえをつきながら、ふうっとちいさくため息をついてつぶやく。
「まだ、ですか」
そして、わたしはにこやかにこたえる。
「まだ、でしょ？」
＊
リュウをストーカーに仕立てあげたあのとき。
ハルはリュウのかばんをぶちまけるようにみせて、実はわたしの家の鍵をさっとぬいておいてくれていた。
ほかにもコピーがあったのかはもうわからない。
リュウとの接点はあの日に完全に切れた。
あれから顔もみていないし、連絡もない。
あのままあの家に住むことも考えたけれど、
「それはワタクシがゆるしません」
ニノがおれる気配をまったくみせず、
「またウチにきますか？」
再びそんなこといいだしたから、職場にも近いほうがいいよなとも考え、わたしはお店に自転車で通える距離のマンションへひっこした。
愛車はあいかわらず青いミニベロ。
さくらの季節も、アスファルトをじわじわ熱する真夏も、落ち葉で舗道がおおわれる秋も、街全体がきらきらイルミネーションにかざりたてられる１２月も。
わたしは自転車をこいだ。
るるる、るるるーるるーるる、る、るるるーるるーるる
るーるるるーるるるららー
嵐のうたはたくさんおぼえた。
でも、ふいにくちずさむのはいつもこのうた。
たいせつなひとが、ひとたちが、わたしにおくってくれたたいせつなうた。
＊
深夜にもかかわらずニノにお礼のメールをいれて。
ベッドサイドにかざってあるわたしの背中が描かれた絵にそっとふれる。
そして、わたしはふんわりやわらかなきもちでつめたくひえたシーツの中にもぐりこんだ。
＊
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作者名：ひか | 作成日時：2016年1月19日 17時
