歪情 (ページ43)

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紛失 - Hokuto side ページ43

2022年11月＿＿＿

秋も一段と深まり、寒さが身にしみる季節になった。
俺達は別件で慌ただしく、なかなか例の事故にまで手が回らなかった。
今日は珍しく午後に手が空いたので、以前課長室で読み切れなかった分の資料とにらめっこをしていた。

yg「北斗、そんなしかめっ面してたら顔が凝っちゃうよ？」

険しい顔でペラペラと資料をめくって眺めていると、背後から髙地さんの声が聞こえてきた。

hk「顔が凝るって何ですかそれ。」

yg「あれ、言わない？」

hk「言わないでしょ。」

彼の独特の表現にすかさずツッコミを入れた。
数ヶ月一緒に過ごしているうちに、彼との距離も縮まってきた気がする。

yg「そういえばさ、ジェシーくんの資料ってこないだ見てないよね？」

hk「彼のはまだ見てないですよ……この中にあるんですよね？」

目の前に積まれたファイルを指差すと、彼は「それがさぁ」と言って眉毛を八の字にしながら頭をかいた。

yg「無いんだよね、ファイル。」

hk「えっ？」

yg「本棚に仕舞ってあったはずなのに、今朝出そうとしたら無くなってて。」

えっ。
無くなったって、どういうこと？

hk「俺、見てないですよ。」

yg「そうだよなぁ……まずいな、あれはまだ俺も読んだことが無い資料なのに。」

はぁ、と溜息をつきながら本棚やデスクの引き出しを探す彼。

そりゃまずいな。
だって今の所一番謎に包まれているのは彼なのに。
まだほぼ何も分かっていない。

よりによって彼の資料かぁ……。

hk「俺も探すの手伝いますよ。」

yg「いや、北斗は資料読んでて良いよ。」

彼は「ありがとな」と俺に向かって言うと、本棚のファイルを片っ端から出していく作業にとりかかった。

大変そうだなぁ。
一冊ずつ確認して、戻して。

でも、俺は俺のやるべきことに集中しないと。

俺は深く一呼吸してから、再び資料と向き合った。