歪情 (ページ36)

今日:23 hit、昨日:25 hit、合計:55,258 hit

2 - Hokuto side ページ36

北六音署から1時間弱程車を走らせると、樹くんが開いているという陶芸教室に着いた。

青い屋根の一軒家。
薄い板で出来た看板には「ようこそ陶芸教室へ」と記されていた。

yg「すみませーん。」

ドアが開いていたので、そこにかけられた黒い暖簾をくぐって顔を覗かせると「はい」と言う声が聞こえてくる。
数秒待つと、青いエプロン姿の若い男性が手をタオルで拭きながらこちらへやって来た。

yg「警察の者なのですが、田中樹さんですか？」

jr「はい、そうですけど。」

yg「少々お時間よろしいですか？」

jr「今はお客さんがいらっしゃるので、少しだけなら。」

彼はそう言うと、タオルをエプロンのポケットにしまった。
奥を覗くと、確かに数名のお客さんが土を捏ねている様子が窺えた。

yg「実は私達、14年前の事故について調べ直しているのですが。」

jr「あぁ、叔父の件ですか。」

yg「えぇそうです。ちなみに私、当時本件の担当刑事だった髙地の息子なんです。」

jr「へぇー、親子2代に渡って調べてるんですか、大変ですね。」

yg「えぇ、まぁ……。」

彼は淀みのない清々しい笑顔を浮かべた。
影を知らない、まっさらな人の様に見えた。

yg「ルイス・ジェシーさんをご存知ですか？」

jr「えぇ、知ってますよ。」

驚いた。
意外にも彼はあっさり認めるなんて。

yg「じゃあ2人は友達で？」

jr「はい？」

yg「仲が良かったんですよね？」

jr「……何か誤解してません？」

yg「えっ？」

jr「友達なんかじゃありませんよ。だって数回しか会ってませんし。」

yg「でも、」

jr「大体、学区も学年も違うんです。それに彼とはもうずっと会っていません。」

「そんなんじゃ友達って言えませんよ」と言って彼は困ったように口を尖らせた。

……なんだ。
2人の親交を認めた訳では無いのか……。

結局、ふりだしに戻ってしまった。