歪情 (ページ28)

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2 - Hokuto side ページ28

sn「そういえば新しい職場はどうなの？」

黙々とカレーを堪能していると、慎太郎が俺に尋ねてきた。

hk「良い感じだよ、上司も優しいしね。」

sn「上司って昨日の？」

hk「そう、髙地さんな。彼、あの若さで課長なの、すごくない？」

sn「ふーん、出世してんね。」

何となく棒読み感が拭えない彼の返答に苦笑しながらも話を続けた。

hk「髙地さん、普段はほんわかしてるけど急にスイッチ入って真面目になったりしてさぁー。」

sn「ほく。」

hk「ん？」

sn「何の事件捜査してんの？」

慎太郎が急に話を変えてきた。
彼のことだ、俺が髙地さんの話をしているのが面白くなかったのだろう。
感情が露わになっている時、彼は大抵俺のことを「ほく」と呼ぶから。

些細なことで嫉妬しちゃって可愛い奴だなと思いながら彼の質問に答えた。

hk「14年前に起きた男性の転落事故だよ。」

sn「事故？事故ならもうとっくのとうに解決してんじゃないの？」

hk「それがね、他殺だった可能性があるんだ。」

sn「へぇーまじか、どこで起きたの？」

hk「それがさ、南六音町なんだよ。ほら、隣町の。」

sn「……えっ……？」

事故が起きた場所を伝えると、彼は顔をひきつらせた。

hk「えっ、何？」

何だろうと思い、気になって尋ねてみた。
彼は一瞬何か思い詰めた様な表情を浮かべたが、すぐに普段通りに戻った。

sn「いや、随分近場で起きてんだなぁって思って。」

hk「だよな、慎太郎は当時のニュースとか覚えてる？」

sn「うーん……俺当時小5だし、流石に覚えてないなぁ。」

隣町で起きた出来事だし、慎太郎ならもしかしたらと思ったがやはり彼も覚えていないらしい。

俺はそもそも事故で記憶が無いしなぁ。
ましてや大我くんの事件も覚えてなかったし、人間の記憶力なんてそんなもんだろう。

sn「他殺の線で捜査してるってことは犯人の目星はついてるの？」

hk「うーん、犯人だとはまだ思ってないけど……まぁいるよ。」

sn「へぇー、その事件詳しく教えてよ。」

彼は興味津々なのか身体を乗り出して聞いてきた。
「詳しく」と催促されると、ここから先は守秘義務があるのではないかと思ったりもしたが、一応彼も交番勤務とはいえ警察官なので、特別に話してあげることにした。