歪情 (ページ16)

今日:21 hit、昨日:25 hit、合計:55,256 hit

写真 - Hokuto side ページ16

京本さんが樹くんと出会ったのは2003年頃、樹くんは8歳、大我くんが9歳だった。
当時京本夫妻はこの家の一階で洋食屋を営んでいたらしく、ある日樹くんは両親と一緒にここを訪れた。
そして、何度か食べに訪れるうちに樹くんと大我くんが仲良くなり、次第に家族ぐるみの仲になった。

2人は互いに一番だと言い張る程仲が良く、兄弟のような関係だった。
しかし、小学5年生になった大我くんは中学受験で受験勉強が忙しくなり、次第に2人は疎遠になっていった。

そんな2人が再会したのは2009年頃だった。
樹くんの叔父が亡くなってから約半年後、彼は一人でここに訪ねてきたという。

かねてから一人暮らしの彼を家に迎え入れることを家族で話し合っていた京本さんは、樹くんに声をかけその話を持ちかけた。
彼は初めは「申し訳ない」の一点張りだったものの、夫婦や大我くんと話しているうちに気持ちが変わったのか、途中であっさり承諾してくれたらしい。
こうして樹くんの京本家での生活は始まった。

yg「大我くんが行方不明になった時、樹くんは家にいたんですか？」

「樹は中学卒業と同時に我が家を出て一人暮らしを始めたんです。なので大我が行方不明になった頃にはもういませんでした。」

yg「なるほど、高校は私立の？」

「えぇ、青石学園です、ここから車で1時間程の。」

「ほぼ東京都ですね」と言って頷く髙地さん。
よく知っているなぁ、と部下という立場を忘れて感心しながらササッとメモに付け足しておいた。

yg「あの後ろにある写真は大我くんですか？」

髙地さんの視線の先を辿ると、棚の上にいくつかの写真立てが並んであった。
京本さんは「あぁ、それね」と言って立ち上がり、持ってきて俺達に見せてくれた。

hk「わぁ……可愛い。」

一枚目を見てみると、砂浜で砂遊びをしている男の子が写っていた。
とても可愛らしい女の子のような顔立ちの子だが、目鼻立ちがシュっとしていて男の子らしさもある。

yg「おぉー、成長が素晴らしいですねぇ。」

まるでおじさんのようなコメントをしている髙地さんに苦笑いをしつつ、彼が見ている2枚目の写真に目を移した。

hk「本当だ、めちゃくちゃかっこいい。」

2枚目は体育祭だろうか。
キリッとした表情で競技に取り組んでいる大我くんが写っている。
正面から写されてはいないが、この一枚で既に彼がイケメンに成長したということは確信した。