ラバーソウル！ (ページ12)

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迷子ページ12

「新どこいってん？」

ブツブツ言いながら、お昼休みにトイレ行ってくると言ってから、なかなか帰ってこない新を捜してたら、たまたま職員室の前で、誰かと話す、もとちゃん先生を見つけた。

「もとちゃん先生！」

嬉しくなって、手を挙げて近づいたら、

「蜷川、ええとこ来た」

ってもとちゃん先生に言われて、何気に隣をみたら、ん？という顔をして、白衣の王子様が、俺に笑って会釈した。

この人、近くで見ても綺麗けど
俺、この薄ら笑い嫌いやわ
何考えてんのかほんま、わからん。

始業式の壇上での挨拶の時は、ほんまに綺麗な人やなぁと素直に思った。白衣の王子様やんって。
やけど、新とサッカーしてる時とか、普段すれ違った時とかほんま、こっちよう見てるし、でも声かけてくるわけやないし。
俺、多分顔にも出てたと思う。

「これ、次の授業のプリント先配っといて」

はい、と言って、もとちゃん先生に渡された3種類のプリントの束は中々の重さや。

うおっと思わず数枚落としたら

「腕の力もないんか？」

と笑って、もとちゃん先生が拾ってくれてる。

このクシャってなる笑顔ほんま好き。それに、半袖から見えてる、細い体の割に長くて太めの首筋も、筋張った男らしい手も。

手伝う事忘れてジィッと見入ってると、

「はい、どうぞ」

自分の足元に落ちた1枚を拾った王子が、持っていたプリントの束を俺の手ごと支えて、はいっと1番上に差し込んだ。

手ぇ‥あったかくてふわふわしてて女子みたいやん。

もとちゃん先生と真逆や。

思わずぼぉっと王子のこと見つめてたら、もとちゃん先生に、

「蜷川、早よ行くで」

と背中をグイッと押された。

「もとちゃん先生、話もうええの？」

ちょっともつれた足を気にしながら、前に歩き出したら、

「蜷川、魔法にかかりそうになってたから」って意味わからん事笑顔で言われた。

俺もう、その笑顔に恋の魔法かけられてんで、って言いそうになったけど、流石にこれは気持ち悪がられるなと思って言わんといた。

「で、蜷川何してたん？」

「あ、先生、新しらん？行方不明やねんけど、」

「ほんま、お前ら仲ええな、ずっと同じ校舎おるのに、流石に迷子にならんやろ？」

って笑ってるから、いやたまに家に帰る道もわからんなるらしい、って言うたら、

「重症やな、病院連れて行かな」

ってめっちゃ深刻な顔させてもうた。