一目惚れ ページ1
「男同士てありえへんやろ」
今の聞き捨てならんぞと新が、後ろの席の俺の方を振り返る。
「元、又、心の声でてもてる」
新の隣の席のくうちゃんが俺の方を睨む。
「えっ？」
俺ちゃうけど？
そう思って、多分声の出所の犯人やと思われる彼を見ると、後ろの棚スレスレまでに机を下げて、何もなかったかのように教科書を食い入るようにみてた。
ほんの数分前
「‥めっちゃかわいいやん」
「え？惚れたん」
大袈裟に驚いた顔で、新が振り向いたから、誰に話しかけてんねやろ？と後ろを向いたら、お前や！と頭を叩かれた。
高3の6月という、珍しい時期に、クラスに転校生がやってきた。
鮮やかな金髪に、アクセサリーを沢山つけて、自分の好きなように制服を着こなしている彼は、半沢洸です、と簡単な自己紹介をした。
ここの高校は、中学からのエスカレーター式で、中高共に男子校。制服はあるけど、硬い校則はない。
女好きの父親に苦労させられてる母親の強い意志で、俺は強制的に男子校に入れられた。
中学の同級生は、ほぼ、彼女が欲しい、もう、男ばっかり無理やと言って、共学の高校を受験し、そのまま、高校に進んだのは、俺、友達の新、くうちゃん、の他10人やった。
「こんな、パラダイスないやろ」
うちの母親のような考えが逆効果なのが、新や。
新は、中学の時から、カミングアウトしていて、見た目の良さからモテた。死ぬほどモテた。ほんま、告白してくるやつ全部食ってもうたんちゃうかな？ほんま見境いないわ。
そんな新も高校生になって3年生の先輩に本気で一目惚れして、入部したのは囲碁部やった。
やけど、元々根が真面目な新は、囲碁にハマって、気づいたら、好きな先輩は卒業してたらしい。
ほんま、アホやろ。そんな話は置いといて。
「‥惚れた？誰が？」
元が、かわいいとかいうの初めて聞いたわ、と隣のくうちゃんも、身体をこっちに向けて興味しんしんな顔してる。
いや、誰の話してんの？
「半沢君、上重の隣の1番後ろの席で」
元、色々面倒見たり、ともとちゃん先生が、新とくうちゃんに隠れている俺を探すように、指をさした。
わざと背伸びして、もとちゃん先生が見る方に身体を揺らして俺の事隠してるくうちゃんと新に、お前らデカいねんと、もとちゃん先生が笑う声が聞こえた。
くうちゃんの隣を通った時に、一瞬半沢君と目があって、
「かわい‥」
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作者名：みぃ | 作成日時：2017年11月8日 2時
