イブラブ！！ (ページ8)

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クリーニング店ページ8

「もとちゃん、いてる？」

最近自動ドアになったばかりのちょっと古びたクリーニング店に入って、無人のカウンターから、中の作業場に呼びかける。

「お、げんやん、久しぶり」

青いエプロンで、白いYシャツの裾をめくりながら出てきた幼馴染のもとちゃんはこのクリーニング屋を最近継いだ2代目や。

「こないだのクリーニング代、渡しに来た」
と、これ、お礼、と小さなビニールのバッグに10個程入った小さなみかんをカウンターに置く。

クリスマスの日、朝一で、黒髪美女とのノロケ話を開店ギリギリまで聞かせたのにもかかわらず、笑顔でウンウンと最後まで聞いてくれたそのお礼。

あとで、しまったと気づいたからやけど。

同じ日、高級仕上げを頼んだストールを閉店後に取りに来た俺に、もとちゃんはお代は今度でいいから、はよ用意しに行きと、笑顔で送り出してくれた。

「え？何のお礼？」

ヘヘッと笑いながら、これ俺の好きなちっちゃいみかんやんと嬉しそうに１つ手に取った。

「もとちゃん‥まだお仕事おわってへんで‥」

後ろの壁から顔を半分だけ出した、アルバイトのイケメン大学生くうちゃんが、もとちゃんじゃなく、俺を睨みつけながら、低い声を出す。

「うわっ、くうすけ、びっくりした。」

みかんに親指を突っ込んだもとちゃんが、空いている方の手で心臓をおさえる。

「ほら、もとちゃん、親指黄色なってる。ほんま、もとちゃんは、俺がおらんと何にもできんねんから‥」

俺の存在は無視して、ゆっくりみかんを外して、カウンターに隠してあったウエットティッシュで、優しくもとちゃんの親指を拭いてあげるくうちゃん。

ありがとうって言いながらなぜかニコニコで素直に拭いてもらっているもとちゃん。

「どっちが年上やねん。」

見てられへんわ。

思わず呟いたら、

「見んなや」

真顔で言われた。

いつも、俺に敵意むき出しの、くうちゃんは、多分もとちゃんを俺にとられると思ってるらしい。
てか、先に友達なん俺の方やねんけど。お前一年前来たばっかりのただのバイトやないか。
ただのイケメン大学生やないか。

「あ、こないだのお代いくら？」

高級仕上げなんか普段使わへんから、足りるかな？なんて財布を覗いていると、ええよ、ってもとちゃんの優しい声がした。

「え？あかんよ」

「やって、げんの大切な人になるかもしれへん人のものやん。ええからそれで2人でコーヒーでも飲みに行き」

「あぁ」