検索窓
今日:41 hit、昨日:8 hit、合計:7,342 hit

そのあと ページ6

翠がバタン、と大きな音を立てて室長室から出ていく。

 冷静な彼にしては珍しく、感情をあらわにしていた。

 りんは、はああああ〜っと大きくため息をつき、自分の特別にあしらえた室長席に腰を据えた。心地よい柔らかさが身を包む。

 しばらく__およそ十分ほど経っただろうか___もう一度気配があった。

 ただし、さっきとは違う人間の。『ヒナギク』の室長は、ゆっくりとだらしなくソファにもたれかけさせていた体を起こす。もう彼女には、扉の向こうにいるのは誰か予想がついていた。

 そして、ノックの音。


「室長。秋風もみじです。入ってもよろしいでしょうか?」


 予想通り。りんはいつものポーズ、両膝の上それぞれに両肘を置くというポーズで、


「入れ」


 と、促した。

 今度は無事、音もなく扉が開く。あどけなくも切長の瞳を有する金髪の少女、 秋風もみじ がひょっこりと顔をだした。

 ただし、その美しい顔は今は顰められているが。

 もみじは、入ってきて開口一番、己の上司に対して愚痴を言い始めた。


「……室長。あんまり翠をいじめない方がいいと思います。いつか刺されますよ。」「ははは。こえー……なー……」


 りんは途中で笑うのをやめて、もみじはじっとりんを見つめた。


「……室長?」「いやぁ……なあ、もみじ」「はい」


 りんはゴギゴギっと鉄パイプを曲げたかのような音を肩から鳴らして、立ち上がった。

 もみじが怪訝そうな顔で背筋を伸ばす。

 
「……一つ。頼み事していいか?」


 

来訪→←つづき2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (39 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
16人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

沙月かぐや - 沙月かぐやさん» 結局戻ってきました。また更新をガラパゴスカメスピードで始めます。よろしくお願いします (10月28日 18時) (レス) @page47 id: f5040de9d0 (このIDを非表示/違反報告)
沙月かぐや - プロフィールにも書いたとおり、短編集を作りました。まだ何も書いていませんが、よろしければそちらもお願いします。いつも応援、ありがとうございます。 (2022年12月29日 20時) (レス) id: b3854d6ed6 (このIDを非表示/違反報告)
沙月かぐや - さくにょさん» 本当ですか!?まだ裏つくに慣れてなくて、全然そういうことに詳しくないので、教えていただけて本当に嬉しいです!書き直しますね!コメントの件ですが、お気になさらず…いつも本当に力をもらっています、ありがとうございます (2022年12月10日 21時) (レス) id: df27e88f4d (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - 最近続けてコメントしてしまっていて・・申し訳ありません💦ただ、かぐやさんが断念された「や」から始まって「つ」で終わるものですが、二つの漢字の間に全角の間を入れると打ち込めるはずです!!是非やってみてください! (2022年12月10日 20時) (レス) id: b15bd042db (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - 沙月かぐやさん» そうなんですね!嬉しいです!是非コメントを((殴  私もいつも楽しませていただいています! (2022年12月7日 22時) (レス) id: 075aa05b66 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:沙月かぐや | 作成日時:2022年1月16日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。