君を信じてみたいから

おはなし ページ46

「おー、よく来たなお前ら。まぁとりあえずここすわれ」

　その軽い…と言ったら失礼だけど、場違いに明るい声が室長室に響き、わたしは目を白黒させた。

　呼び出しがあるというのでお叱りかとかなり緊張していたが、どうやらそんな空気ではないらしい。少しだけ安堵する…

　…というか初対面の時から思ってましたけど、かなり室長って、元気な方ですかね…？

「元気というか、どこまでも自由奔放なだけ」「おいおいひでーぞ翠！」「事実です」

　さらっと心の声を読み取られ返事され、しかもいつのまにか翠様は既にソファに座っている。驚いていると「早く」と手招きされた。…え、あの。

(…翠様の隣…？)

　どう見ても手招きする方じゃない手は翠様の隣を示しているように思うのですが。

　だが、お断りしても失礼だ。恐る恐る、ソファの一番端に腰掛けた。

　室長がその様子を見て満足げに微笑み、言葉を発する。

「なかなか仲良いな」「…えっ」

　あ、まずい。

　思わず驚きすぎて失礼な声を…！というかこの様子で仲良く見えますか…？！というかわたしが翠様と仲良くとか烏滸がましいというか何というか…！！！

「…」

　あっやっぱり翠様も無言で眉を顰めてらっしゃる…あああごめんなさい…でも先ほど注意されたばかりだから謝りたいのですけど謝らないです…

　逡巡するわたしを楽しそうに見た室長は翠様に視線を移した。「珍しいな」とおっしゃる。

「お前が新入りをどつかないの」「ど、どつ？」「どついていません。洗礼です。」

　物騒な言葉に聞き返せば更に物騒な言葉が返ってくる、どういうこと…？

　室長が笑いながら「こいつ、新入りをめちゃくちゃにフルボッコにすんの」と翠様を指さした。翠様といえばもう訂正するのに疲れられたらしくそっぽを向き続けている。

　というかなぜわたしはここに呼ばれたのだろう。今のところ雑談しかしていない気が…

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