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Aside
若利くんとパス練習をしてからもうかれこれ10分は経つ。
『ねえ若利くん』
「なんだ?」
『こうしてると、中学のこと思い出すの
付き合ってくれてありがとう』
若利くんが奇妙なコントロールで私の腕の中にボールを落とすから、疲れることは無かった。
「あぁ、しかしそろそろ下校時刻が…」
ズキッ
え?なにこれ、
急に左手首に走る痛み。何度か経験したことのある痺れ。
体育館にはボールが床にバウンドする音だけが響く。
「A?どうしたんだ?」
『ごめん、手が…』
あーあ、調子乗っちゃった。左手がかなり痛い。
「大丈夫か?動かせるか?」
若利くんが心配してくれてるのに、答える代わりに痛みで顔を歪めてしまう。
痛くなくなるまで安静にしてようと床に座り込むと
若利くんがおもむろに立ち上がって救急箱を漁っていた。
なにしてるんだろう?
冷やしてくれるのかな。
そう思ったのもつかの間、若利くんはテーピングを取りだし、スっと私の手を取った。
体育館で2人きり、それに加えて若利くんとの距離は瞬く間に近くなり、少しどころかかなり動揺してしまう。
『えっ?あ、ありがとう…』
「こういうのはAの方が上手いのかもしれないが、気休めだ。」
じわじわと自分の顔が赤くなるのが分かる。
若利くんはいつも恥ずかしいことをさらっとするし、それをさも当然かのように振る舞う。無意識なのだろうか。
「俺はモップがけをするから、荷物をまとめておけ。」
最後まで気遣ってくれる若利くんとお別れをして、私は家に帰った。
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ピンス(プロフ) - 面白いです!続き楽しみにしてます!! (3月26日 9時) (レス) @page21 id: a7fb103bed (このIDを非表示/違反報告)
ふみ - わぁ〜!!超イイ話です👍 高評価とコメントさせていただきま〜す (3月11日 23時) (レス) id: 567d5d614d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みあ | 作成日時:2024年2月22日 0時