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ゆっくりタクシーが停まる。
てっきりミンくんの家に着いたんだと思っていたから、見覚えのある窓の外の景色に頭が混乱してる。



「着きましたよ?」

『ここ、私の・・』

「自分の家も忘れたんですか?」

『で、でも、ミンくんを送っていくって・・』

「先輩を送ってからに決まってるじゃないですか(笑)」

『それじゃあ私が送れないじゃない。』



「それもそうですね」なんていいながらも、車を降りて私に手を差し出してくれる。
怪我人になにさせてんの、私。



『ちょっと来て。運転手さんちょっと待っててください。』

「え?先輩?」



こんなことでミンくんの気遣いとチャラになる訳ないけど、
彼を部屋の前までゆっくり、でも少し急ぎながら引っ張って、
急いで持ち出してきたものを手渡した。



「なんすか?これ。」

『私の作り置き。今日の夕飯に作っておいたカレーとサラダ。こんな時間だし、もう少し軽いもの食べたいから、よかったら食べて?』

「・・・」

『あ!もしかして実家暮らし?彼女いる?迷惑だったら、』



無反応のミンくんをみて“他人が作ったものって食えないんすよね”とか言われるんじゃないかと思って、身構えていたら



「いえ(笑)独り暮らしで彼女もいません。」



顔を真っ赤にしたミンくんの顔を、街灯が照らすから拍子抜けした。



「嬉しいっす。有り難くいただきます。」

『うん。たぶんおいしくできてると思うから、体力つけて、元気だして!』



真っ赤な顔がはにかんだ表情にみえる。
今日だけでいろんなミンくんがみえてきて、
なんでだろう、胸がぎゅってなった。

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作者名:蒼しょこら | 作成日時:2022年5月16日 15時

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