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第92話 ページ2

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――Aが居なくなって約3ヶ月が経とうとしてた。



「…煉獄さん」

「!竈門少年!毎日来てもらわなくとも、俺は元気だぞ!」



布団からゆっくりと起き上がり、そう言って笑う煉獄さんからは、ずっと悲しい匂いがする。



「…いいんです。ゆっくりなさってください」

「…すまないな」



煉獄さんの怪我は酷く、まだ完治まで時間がかかる。しかも左目は完全に視力を失ってしまった。

…何故、あの時俺は飛び出せなかったのだろうか。もっと強かったら、Aや煉獄さんの力になれたはずなのに。

そんな後悔が、ずっと止まらない。いくら訓練したって不安が拭えない。



「(心が…折れてしまいそうだ…)」

「竈門少年、俺の生家には行ったか?」

「あ、はい…。あの、本当にいいんですか…ご家族に訃報を出して…」

「お館様がそうする方がいいと判断されたんだ。どの道、まだ暫くの間俺はあまり動けないから、会いたくとも会えない」

「……」



戦う事が出来ない煉獄さんが再び鬼に襲われないようにと、お館様のご厚意で藤の花が咲く土地へと屋敷を移した煉獄さん。



「…Aの情報は、何かあったか?」

「いえ……これといったものはないです…」

「…そうか」



外を見つめる煉獄さんは、きっと彼女を思い出している。

…俺も、1日も忘れたことはない、Aのことを。藤の花を見る度、香りが匂う度、彼女を思い出す。



『"炭治郎ー!見て!凄いでしょこれ!"』

『"ふふっ、やっぱりお兄ちゃんだなぁ、炭治郎"』

『"炭治郎…――"』



「(A…)」

「…俺は、Aと約束をしていた」

「え?」

「無限列車で君たちと会う前だ。任務が終わったら、いつもより豪華な食事に行こうと、約束していたんだ」

「……」



外を見つめたまま、ぽつりぽつり、と言葉を紡ぐ煉獄さん。



「だから、絶対に死ぬなと。彼女は念を押すように俺に言った。…まるで、俺が死ぬと思っているように」

「……」

「思い返せば…あの時、猗窩座の腕をAが斬ってなければ、俺の身体に刺さっていただろう」

「…!!」

「だが、俺が救われても、彼女がいなくなってしまっては…約束も守れないのにな」



そう言って微笑む煉獄さんは酷く哀しいものだった。



「…何故君が泣く、竈門少年…」

「うっ…ぐすっ…」

「俺は、信じよう。Aがまた帰ってきてくれると…。だから、竈門少年も諦めないでくれ」

「はい…っ!」

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月花 - 善逸との絡み入れて欲しいです (2020年1月23日 7時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 大正コソコソ話!夢主は鬼殺隊に入り始めた頃任務がキツくて来世は隠に入ろっかなと思ったらしいよ (2020年1月23日 7時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - 星廻さん» コメントありがとうございます!!(*´-`*) シンプル!笑 嬉しいです(*´`) (2019年10月19日 0時) (レス) id: 3900fac987 (このIDを非表示/違反報告)
星廻 - すきです! (2019年10月18日 23時) (レス) id: 345c689636 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん(プロフ) - 廻那さん» コメントありがとうございます!!更新頑張っていきます!(*^^*)ああああ、ご指摘ありがとうございます( ; ; )すみません( ; ; )すぐ訂正します( ; ; ) (2019年8月10日 1時) (レス) id: 81b06921bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たくあん | 作成日時:2019年7月13日 18時

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