押しが強すぎるよ轟くん (ページ7)

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どんどん事情を知らない人がなんだなんだと集まってくる。

「・・・いた」

あまりの人だかりに彼もいたなんて気が付かなかった。ずっとずっと避けてばれないようにしていたのに。
気が付かなかった。彼が人を押しのけてこちらに近づいてきているなんて。

「おい。お前やっぱりあの時の」

肩に手をおかれて引かれる。その流れのまま振り返り至近距離で見つめる顔。
その人の顔は嬉しそうで、泣きそうで

「轟さん？」

手を握っていた八百万さんが驚いた顔をしていた。周りの人も驚いた顔をしてみていた。
中には元カレ？痴情のもつれ？とかあらぬ事を言い始める人もいた。

「なんで。どっかいったんだよ」

肩においていた手に力が入る。やめて、今の一言で変な事囁かれてる。泣きそうな顔しないでください。

「俺。ずっと待ってたんだ」

「え。なになに？轟くんどういう関係？」
「え。わかんない。鎖渡さんと一緒の学校だった時そういった話なかったし」

麗日さんは緑谷くんとこそこそ話していた。いや、本当にそういった関係じゃないんです。
この人だかりをどうやって切り抜け、この人をどうやって撒こうかぐるぐると思考を巡り渡らせる。

「じゃまだどけ」

この声は。

どんどん人が分かれていく。バチバチと音が聞こえる。

「爆轟」

轟くんがそう名前を呼ぶ。

「喧嘩ならよそでやれ。邪魔だ」

「悪い。だが喧嘩じゃない」

「知るかよんなこと」

轟くんが肩に置いた手を引いて道を譲る。爆轟くんが切れながらずかずかと歩いていく。

「まってよ！爆轟くん！」

その後ろから聞こえてきた声は、ここの夢主。歌川の声だった。彼女は両手を前に出して追いかけていた。その様子を見て元同級生の麗日さんと私は声を上げていた。

「みんな離れて！」

麗日さんがそう声をあげた。歌川さんが人だかりの足に引っ掛かり倒れていく。それからはピタゴラスイッチだった。
彼女の２つあるうちの１つはラッキースケベられ。
ある男子生徒が転ばないように彼女を支えようと腕を伸ばし胸を掴み、ある生徒がおしりを掴んでしまい・・・
人が多いのが災いしてしまった。男女が悲鳴を上げながらラッキースケベ、ラッキースケベられのピタゴラスイッチが始まった。
目の前で起き始めたそれに轟くんは驚いていて、私は頭を抱えた。この人だかりでは不用意に動けない。そう思っていると逃げようとしていた男子生徒がこっちに走ってきていた。