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Ep.8 ページ16

朝目を覚ましたら、棘はまずベランダに出る。それも決まって4:00というまだ日も明けていない時間だ。

すると中庭には必ず彼女がいて、筋トレや体術練習をしている。
このストーカーじみた行為に棘は罪悪感を感じつつも何故か止められない。

"見てるだけ"

そう決めたはずなのにやはり欲は出てきてしまう。

いつしか、自分もそこへ行きたい、と感じるようになった。
きっと彼女なら笑顔でOKをくれるんだろうが、そんなに容易に彼女に近付いてはいけない気がした。

大袈裟かもしれないが、それぐらい棘にとって碧の存在は輝いていて、寛大で、遠いものだった。



「...!」

彼女がある方向を見て手を振る。すると彼女の元へ何者かが歩み寄っていった。

(あ......)

すぐ分かる。後ろ姿しか見えなかったが、あの目立つ白髪と長身。それは自分達の担任、かつ呪術師最強の男、五条 悟だ。

何やら話していたが、この距離だと何を言っているのか聞き取れない。

悟はストレッチをしている碧の隣に座り、楽しそうに彼女を眺めていた。珍しく目隠しの包帯を取っているため表情がよく分かる。


そしてちらりと見えた碧の顔を見て、思わず棘は目を見開いた。

普段から彼女はよく笑うが、あんな表情で笑うのは初めて見た。


自分の知らない何かがあの2人を繋いでいる。

直感的にそう思ったが、まさかな。とすぐ頭からかき消す。第一、悟と碧は教師と生徒の関係だし、出会って間もない。悟は基本生徒との距離は近いし、どの生徒ともひたむきに向き合っているように見える。

碧だってそうだ。根っからの善人。その2人の組み合わせだから余計に良く見えてしまうのだ。

棘が一生懸命自分にそう言い聞かせる中、その全てをぶち壊すような出来事が目の前で起こってしまう。

悟が碧に目隠しを差し出し、碧はそれを受け取ると悟の後ろに回って目隠しの包帯をまいてあげていた。
すると、悟が包帯をまく碧の手をとって、自分の胸の前で手を組ませた。 それは必然的に碧が悟を後ろから抱きしめるような姿勢となる。

それを見た途端、これ以上無いくらいに胸が痛くなった。

見たくない。見たくないけど....気になってしまう。

自分は何がしたいんだよ...


最近棘は、自分の情緒が不安定すぎて戸惑っている。

彼女の行動一つ一つで、嬉しくなったり、悲しくなったり、苦しくなったり....


棘はその場にしゃがみこんで、ゆっくり俯いた。

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設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟 , 狗巻棘   
作品ジャンル:恋愛
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IsANe(プロフ) - とあるモチさん» コメントありがとうございます! ご期待に添えるよう頑張ります!! (2020年5月12日 1時) (レス) id: 8fefbb8a59 (このIDを非表示/違反報告)
とあるモチ - めっちゃおもしろいです棘カッコいい!!これからも更新がんばって下さい!! (2020年5月12日 0時) (レス) id: b97e9ef115 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:IsANe | 作成日時:2020年5月7日 6時

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