everyone ページ15
そこからの私は別にどこに行くかも何をするかも聞いてないのに下手な格好は出来ないと思ってクローゼットを開けたまま仁王立ち。
『さて…』
変にドレッシーにワンピースなんて着たところで普通にコプチャンとかだったらとんでもなく浮く。
結局手に取ったのはシルクの白ブラウスに黒のベロアのジャケット。ダークグリーンのスラックスにした。
バッグが並んだ棚から取ったCELINEのトリオンフショルダーは黒。
自分で買った後にリサに「なんで!オンニ私あげたのに!」と謎にキレられたバッグです。
いつもと大して変わらない格好だけど、メイクはプライベート仕様にした。瞼はキラキラにしたし、リップはオレンジベージュ。
多分、所謂、デートだと思って支度をした。
ドヨン、私にもまだそういう感情が残っていたよ。安心してください。
*
「おー」
『あら、早いね。』
待ち合わせ10分前。私の方が先だと思ってたのにそこには確かに彼がいた。
いつものRomantic Crowmではなくネイビーのクルーネックのウールニットに黒のスラックス。
『どうしてそんなカッコよくしてきたの』
「あ?お前も綺麗にしてんじゃん」
…
…
『ねえここ外だから。普通に素でやるのだけは勘弁して』
「お前だろ始めたの」
会って早々着飾っていようがいつものやり取りに思わず笑ってしまう。
『ねえ、どこ行くの?』
「もう着く」
ここ、と言われた場所に顔を上げるとミシュランに何度も選ばれているような有名なお寿司屋さんだった。
扉を開けるとカウンターには既に2組くらい人が座っていた。
"こちらはどうぞ"と促されたのはカウンターを通り過ぎて奥にあった個室。
2人ともお酒は呑まず。ジフンと食事に行くと気にせず呑めよと言われるけど相手が呑まないのに呑んでも私は楽しくないのでいつも呑まない。
テーブルに向かい合って座るとなんだかいつもと違う空気にどこを見ればいいのか分からなくなる。
『ここ来たことあるの?』
とりあえず浮かんだ質問を投げかけると目の前の彼は湯呑みに視線を向けたまま「いや?」と。
「お前の誕生日だから普段来ない特別なとこがいいと思って予約した」
『…あ…りがとうございます』
「なんだそれ」
質問したら自滅しました。私多分今凄い微妙な顔してます。ニヤニヤしそうで。
運ばれて来たお寿司は白身魚で上に柚子を削ったものが乗っている。
『うわ、美味しそう…』
「いただきます。」
お箸で掴んで口に入れると思わず溜息が出た。
『はぁ…幸せ』
「…美味しい?」
『美味しい。最高。』
「なら良かった。」と口角を上げるジフンを思わず見つめた。
他のメンバーとだって食事に行くことはあるのに、空気が違うのはやっぱり相手がジフンだからなのだろうか。
ぺちゃくちゃ喋らず、静かに食べるこの時間。黙々と食べる向かい側の彼を時々見ると自分も自然となんだか嬉しくなった。
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作者名:RIN | 作成日時:2022年11月19日 10時