4 ページ24
side.A
「…バイクだけどいい？」
「え、車じゃねーの！？」
「そりゃあおれ大学生だからね！？
……そんなに大人じゃないよ。」
「いいんです。連れてって。」
「ちょっと待ってて。」
そう言いおいて、
バイクとその鍵を取りに行く。
君が思ってるほど大人じゃないんだよ、おれは。
大事な妹の好きな人を、
どこかへ連れ去ってしまおうかと思うくらいには。
「どうしてこんな時間に？」
「…さっき、Aから電話があって、
『別れよう。』って。」
「さっき！？
なんでおれきづかなかったんだろう…。
じゃあ、Aにあいに？」
「いや、
まさきさんに逢いたくて。」
バイクは走る。
君の声が聞こえる。
「…どこか行きたい所ある？」
「まさきさんの行きたいところで。」
…わざとなのだろうか。
名前を呼ばれる度に胸が痒い。
「しょうくんはさ、別れようって言われて、
なんて答えたの？」
「…謝ることしかできませんでした。」
「ん、そう。
なんでおれにあいに来たの？」
「無性に逢いたくて。
……最悪ですよね、俺。」
「かもね。…着いたよ。」
少し家から離れたところにある
バス停に腰をおろす。
「こんなとこにバス停があるんですね。」
「確かにこの近く、住宅街だから
特に降りることもないもんね。
ここ高台にあるから景色が綺麗なの。
…こっち来て。」
「ああ、すごい、綺麗。」
さすがに午前四時ともなると家の光は消えているところが多かったけど、
それでも雪のせいでキラキラして綺麗だ。
「まさきさん。」
「んー？」
「なんで俺、
まさきさんに逢いたくなったんだろう？」
「…知りたいの？」
「気のせいだったら良いのにと思ってる。」
「わかってんじゃん。
……最悪だよね。おれもしょうくんも。」
きっとそんな、酷い言葉には似合わないんだろうな、って顔でおれが笑うと、
しょうくんはおれを見つめて言った。
「まさきさん、ちゃんと逢いに来て。
これから、重ねたいの。
今のこの冬だけじゃなくて、来年の冬も、
春も、夏も、秋も、その次の冬も。」
「きっと、ね。」
守れるかどうかなんてわからなかった。
でも絶対、おれはその約束に一生縛られる。
君が春とか夏とか秋とか冬とか言うから、
その度に君のこと思い出す。
「待ってて、いつか。」
「…きっと？」
風がふいた。
思わせぶりな匂いを残してそれは、
おれらを連れ去る様に掠めていった。
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 282人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
灯櫻(プロフ) - taekoさん» たえこさんいらっしゃいませ♪楽しんでいただけて光栄です(ToT)そしてわたしにエールまで！ありがとうございます！へっぽこなりに頑張りますので、よろしくお願いいたしますー！ (2015年1月21日 9時) (
レス) id: 4f3610de5e (このIDを非表示/違反報告)
灯櫻(プロフ) - かしすさん» こんにちは！ワクワクしてくださってとっても嬉しいです！便乗ありがとうございます( ´艸｀)part2もどうぞよろしくお願いいたします♪ (2015年1月21日 9時) (レス) id: 4f3610de5e (このIDを非表示/違反報告)
taeko(プロフ) - しょうさんのお誕生日のお部屋オープンおめでとうございます！ステキなお話と表紙にわくわくしています。楽しませていただいております。編集長、応援していますーっ！ (2015年1月19日 21時) (レス) id: 11daa1040e (このIDを非表示/違反報告)
かしす(プロフ) - こんにちは(*^^)お名前をお伺いしたことのある作者様ばかりで、とってもワクワクして読んでいます。わたしにお誕生日企画を書く技量がまだないので、便乗させてください。さくらいさん、少し早いけどお誕生日おめでとう☆ (2015年1月19日 21時) (レス) id: a100e17a77 (このIDを非表示/違反報告)
灯櫻(プロフ) - さたむー。さん» へっぽこ編集長の、灯櫻です。初めまして。わたしもワクワクしているところです♪たくさんの素敵なお話でお祝いする予定なので、楽しんでいってくださいませ♪ (2015年1月18日 17時) (レス) id: 922568c75c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さくらいさんを祝い隊
| 作者ホームページ：http
作成日時：2014年9月22日 23時
