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*.夕紅葉はきみと.* ページ8

○ A.side*







「なんか、お前らしい歌詞名だったなぁ」




「私らしいってなんですか」





「お前らしい気持ちを込めてる」





「……貶されてるのか褒められてるのか微妙なんですけど」





「転校生は人のこと勘ぐりすぎ」





「ほら、人は誰しも裏表があるものだから。裏表ない人なんて、そうそういないよ」









昔の私は、稀だったのだ。





あんなに正義感が強くて、純粋無垢で、誰かのことを考えるなんて。





……そんなヒロインは、小説の中にしかいない。









「お、完全下校時刻のチャイム鳴ったな。……どうする? 一緒、帰るか?」




「……そうしようかな」









よいしょ、とギターケースの中にギターを入れて立ち上がる。









「持つ」




「いいよ。自分で持てるし」









そうやんわりと断っても、不良くんは半ば奪い取るような形で持ってくれた。









「最近寝てなくて疲れてるだろ。なんか危なっかしい」




「……きみはエスパーですか」




「エスパーいいねぇ」








この人、返す気ないな。




でも、こういうところが優しさなんだと思い、持っててもらうことにする。









「……今日、どうしよっかなぁ」









不良くんが、独り言のようにぽつりと呟いた。









「なに? 今日、なんかあんの?」




「いや。母親がいるだろうな、って思ってさ」









少しだけ笑顔が引きつっていて。




……どこかで、聞いたことがある。




小さな頃に植え付けられた恐怖は、簡単に消えないんだって。









「……よかったら、私の家、来る?」









いつの間にか、そんな言葉が口を突いて出ていた。




……その数秒後、自分が何を言ったのか理解して。





……なに言ってんの、私!!





ほら、不良くんもびっくりしてんじゃん!









「あ、ほら。夏休みの時私が風邪引いて泊めてくれたのもあるし。別に嫌だったら全然、」




「……いい、のか?」









今度は私が驚いて、背の高い不良くんを見上げた。









「……う、うん。きみが家にいたくないんだったら、寝床くらい用意するよ。部屋の広さも足りるし」





「一応これでも年頃の男女だぞ?」




「……きみって、そーゆーの気にするタイプだっけ」




「念のため」









私ははぁ、とため息を吐いて。









「第一、きみじゃなきゃこんな提案してないよ」









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未麗 - 不良君とアーヤの組み合わせが最高でした!!これからもがんばってください!応援してます!! (2022年9月3日 8時) (レス) @page46 id: c3880015a9 (このIDを非表示/違反報告)
阿修羅 - アーヤがクールな感じでいい (2022年1月10日 10時) (レス) @page7 id: 4820c0c437 (このIDを非表示/違反報告)
柚須 - Clock lock Works という歌みたいですね! (2021年5月7日 15時) (レス) id: 8119590feb (このIDを非表示/違反報告)
天奏 - アオさん» ありがとうございます!^_^ (2020年7月25日 14時) (レス) id: e765e8c7f7 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 最高でした! (2020年7月21日 1時) (レス) id: 0202dd951f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天奏 | 作成日時:2020年4月13日 19時

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