小さな「勝負」 ページ43
私ー青葉真帆ーは、文芸同好会のコーナーで「勝負」の計画を立てていた。
今この教室には6人の生徒がいて、時々本の紹介をするために話しかけながら脳をフル回転させてあれこれ考えていたこと。それは、
元いじめっ子との関係を精算すること。
手元にある文化祭の参加者名簿に、小学生の頃、私をいじめていた人物の名前があったのだ。
星が丘学園軽音部の、新海彩花(しんかいさやか)。
かつては友達だったのに、いつの間にかいじめてくるようになった彩花との関係をどうにかしたい。この際、仲直りでも絶交でも、どっちでもいい。とにかくケリをつけたい。
それができるほどの勇気を、この3ヶ月で手に入れることができた。だから私は自分との勝負をすることを決意した。
午前10時40分。私は文芸同好会のコーナーを凉馬に任せ、海斗と共に広場で行われている軽音部のステージを観ていた。なぜ海斗がいるのかというと、吹奏楽部の友達と別れて暇している所でばったり出くわし、その流れで今に至る、というわけ。
軽音部は現在3つのグループに分かれて活動しているらしい。さっきまでは男子4人のグループ、今は男子2人、女子3人のグループ。前に演奏していたグループはとにかく音が大きくて迫力があったけど、今のグループはボーカルの歌がすごく上手い。こうして聞き比べると、個性が見えてくる。
「真帆が聞きたいって言ってたの、次だっけ?」
2グループ目の演奏が終了し、拍手を送りながら海斗が訊いてきた。
「そう」
広場の中央のステージに出てきたのは、男子4人と女子1人。彩花だ。どうやら彩花はバンドの紅一点でギターとボーカルを担当しているらしい。
「盛り上がっていくよー!」
という彩花の声で曲がスタート。
アップテンポの楽しげな曲。けたたましいほどの2本のギター。彩花のハイトーンボイスに、シンセサイザーの男子がハモって、独特の響きを生み出している。
サビが終わると、彩花のソロが始まる。
ふっ。
一瞬だけ、でも確かに彩花と目が合った。彩花はすぐに目をそらし、そして伏せてギターの弦を見ながら何もなかったかのように演奏を続けた。
ステージは大成功に終わった。私は、人が散っていった後も彩花を出待ちしていた。
「うまくいってよかったー」
「マジで盛り上がってたな」
そんな話をしながら、彩花たち5人が広場の端の私がいる方へ歩いてきた。
「彩花」
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2020年9月4日 20時