僕らの世界 (ページ38)

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前日　隼編ページ38

「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
俺ー東海林隼ーは、部室棟の入り口まで海斗を見送った。ハイタッチをしてから手を振り、俺たちは別れた。
海斗が見えなくなるまでそこで手を振り続けたいのも山々だけど、時間がないので早々に退散。

次は、ダッシュでサッカー部の部室に向かう。ここ最近全然顔を出していなかったから、来週の月曜日には戻ります、とコーチに声をかける。怒られると思ったけど、コーチは、
「明日、文化祭だろう。頑張れよ」
と、怒るどころか応援してくれた。よかったー。あざーっす！と一礼して、再びダッシュ。

今度は上履きをつっかけて本校舎へ。渚学園の海洋学部や文芸同好会が使う教室の掃除だ。全部で7クラス使うので結構忙しい。4時30分から荷物の運び込みが始まるので、1時間くらいで終わらせて、廊下や階段も磨いておく。こんな時、海斗がいたら2倍速で掃除ができるのに。そう思いながら床を磨き続け、気付けば4時20分を過ぎていた。部室棟は数学部や美術部を中心に掃除をしていて、時間があったら手伝う予定だったが、そんな時間はないらしい。階段を駆け降りて、靴を履き変えて正門へ。

「あ、ショージ」
5分後、真帆と凉馬が到着。正門の前のバス停に停まったバスから、段ボールを持ってこちらに向かってくる。
「よく来たな」
「寒いね、今日。ずっと待ってたの？」
「いや、5分ぐらいだよ」
しかしその5分で、指先がすっかり冷たくなっていた。

その後も、渚学園の生徒がみんな同じように大きな段ボールを持ってやって来た。そのたびに俺は靴を履き変えて校舎へ案内し、階段を上って下りて、また靴を履き変えて正門へ戻り…と、サッカー部の練習くらいハードな運動をした。

繰り返すこと6回。最後の書道部を見送り、俺の任務は終了。お疲れ様、自分！！普段より30分程長く活動したからか、疲れがどっと押し寄せてきた。

「南中原ー、南中原ー」
いつもの駅。いつものアナウンス。いつもと同じくらいの人の数。
けれど、いつもより低い夕日。いつもよりワクワクしている自分。
非日常のワクワク、ドキドキした感情を味わいながら、いつもより少し速く走って帰った。