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青葉が茂る頃には・2 ページ8

「生徒会長、ですか?」
「そう、生徒会長。俺はあーちゃんならなれると思う」
「さあ、どうでしょう…」
「いや、いける」
私は、正直立候補はできないと思った。ましてや会長だなんて。
「いやいや先輩、私、無理です。野球部じゃないし、文化部だし、女だし」
渚学園の生徒会長は、代々野球部員がなるというジンクスがある。だから野球部以外、特に文化部は、立候補を躊躇してしまう場合が多い。そして私も例外ではない。
「そうか…でもだからこそ、すごいと思わないか?今までの伝統を、文化部で女子のあーちゃんが覆すんだよ」
「私が、伝統を覆す…そんなことしていいんですか?」
「そりゃいいだろ。あーちゃんにだって立候補する権利はあるんだから。今まで文化部の人は、そうやって立候補を躊躇って、狸寝入りして、それが『伝統』になっちゃったんだ。でもそんな伝統ぶち壊していいんだ。文化部の自由化を進めたいなら。それをあーちゃんがやらなくて他に誰がやるんだ。まあ結論を言うと、文化部の命運はあーちゃんに懸かってるから、立候補してほしい」
私は先輩の迫力に圧倒されて、固まってしまった。先輩はそんな私を見てか、話に熱中して睨むようなちょっと怖い目を元に戻して訊いてきた。
「どう?前向きに考えてくれる?」
さっきまでの顔が嘘だったように思えてくる、穏やかな表情。ショージより角が取れて優しい感じがする。
「…はい」
「お、ありがとう。じゃあ何かキャッチフレーズを伝授しよう」
「キャッチフレーズ?」
思いがけない展開のせいか、声が変になった。
「そうだなー…例えば、演説でよく使う『暁には』の代わりになるやつとか」
「へー、何ですか?」
「新1年生が入ってきて慣れてきた頃、『5月半ばくらいには』って意味で『青葉が茂る頃には』とか。伝統をこれでもかってぐらい引っくり返すにはちょうどいい」
「ああ、なるほど」
「どうかな?」
「…なんかポエミーでかっこいいです、使える場面があったら使ってみます」
「そうか、よかった」
「ありがとうございます」
「何かごめんね、飯食ってる最中にベラベラ喋って」
「お構いなく」
「じゃ、頑張ってな」
「ありがとうございました!」
「いいえ、こちらこそ。じゃあね」
先輩はそう言って教室を出ていった。
どんな人かと思ったけど、いい先輩だったな…


青葉が茂る頃には。

使ってみたい。演説で言ってみたい。生徒会、立候補しようかな。

「元」友人→←青葉が茂る頃には・1



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設定タグ:青春 , 学園 , 友情   
作品ジャンル:純文学
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2020年12月18日 22時

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