先輩からの提言 ページ5
「あれ、凉馬くん」
文芸同好会のコーナーの当番の時間があるから、校舎へ向かって歩いている時だった。僕ー伊達凉馬ーは、後ろから声をかけられて振り向いた。
そこには、長いケースを持って、高等部の制服を着た人が。ショージの兄、翔先輩だ。
「今、暇?ちょっと話したいんだけど」
「あ、あと10分ぐらいなら」
「全然オッケー」
先輩は、ニッと笑った。この表情、ショージにそっくりだ。
「まあ、立ち話ってのもアレだし、そこのベンチにでも座るか」
「え、そんなにじっくり話すんですか?」
「いや、そういう訳じゃないけどね、気分かな」
行動がよく分からないあたりも似てるな…
「…とまあそういう訳だから、協力してやって」
「はい」
「話変わるんだけど、凉馬くんは生徒会立候補しないの?」
「えっ、僕はそんな器じゃないんで。するつもりないです」
「そうか?凉馬くん、いい会長になりそうだけど」
「僕が会長?!まさか。凡人で、頭そこまで良くないし、運動部でもないし、いつも『その他大勢』で」
「いや、凉馬くん」
突然、肩をガシッと掴まれた。けどそれ以上に、先輩の真っ直ぐな眼差しに驚いた。
「凉馬くん、君はもっと自分を信じていい。誇っていい。少なくとも、この場で謙遜する必要はない」
「はあ」
「凉馬くんはさ、その他大勢の文化部だからすごいんだよ。運動部で目立つ人が会長っていうジンクスを引っくり返すんだ。そう考えると凡人万歳だろ?それに君なら、色んな人の気持ちが分かると思うんだ。文化部にしか分からないことも知ってるから、運動部が『球技大会3日連続でやります』って言うより民主的で現実的な方向に学校を動かせると思うよ。そして凉馬くんの最強の武器は、『人柄』だ」
「はあ」
「優しくて、決断力もある。人の為に働ける。それは全部、立派な強みだ」
「はあ」
僕は圧倒されてさっきから「はあ」しか言えない。
「信じてないだろ?けどちゃんと証拠はあるぞ」
「え?」
「昨日から、凉馬くんを見つけては尾行してたんだ。君のことを知ろうと思って」
「…全く気付きませんでした」
「そうか。で、君の行動を観察して分かったよ。君の行動には気遣いがある。帰りに道案内したり、混んでる廊下は讓ったり、あと落とし物拾ってたよね。もうこれ、天賦の才能だと思うよ」
「あ、ありがとうございます」
「そうそう、褒められたらありがとうでいいんだ」
でも、「天賦の才能」ちょっと照れる。
「さて凉馬くん、今の話聞いて生徒会に立候補する気は出たかい?」
「うーん…はい」
「ならよかった。頑張れよ、次期会長」
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2020年12月18日 22時