流浪人 集合編 ページ31
「文芸同好会の手伝いに行くから、金曜の放課後は空けとけよ」
ヘイちゃんからそう伝言があったのがおととい。
そして金曜日の放課後。
僕ー松平蒼ーは、図書室の前で待機している。僕のクラスはホームルームがすごく短いから、こうやって助っ人先の部員を待つことにも慣れた。
「お待たせー」
「待った?」
2分ほど経った頃、文芸同好会の2人が到着。伊達の手には、図書室の鍵があった。
鍵を開けると、どこまでも続いていそうなほど本棚がずらりと並んでいた。中学校にしては蔵書の数がやたらと多い。ここへ来るのは3回目くらいで、あまり馴染みがないせいか、「未知なる世界」とか「迷宮」みたいな言葉が浮かんだ。
「あの、他の3人は…?」
と、青葉に尋ねられた。
「多分他の部活の奴らにつかまってるだけだから。もうすぐ来ると思うよ」
「じゃあ、先に始めるか」
伊達は制服の袖をまくって、職員室へ続く階段に向かった。僕と青葉もそれに続く。
「あ、意外と小さい」
「ちょっと重いけど、図書室までお願いできる?」
「任せて」
僕たちは、手分けして運搬作業を始めようとした。
「待たせたな」
僕が段ボールを持ったところで、ヘイちゃん、薫、津田が登場。ヒーローみたいな台詞を言ったのは津田。本当だよ、とツッコんでから、1人1つ段ボールを持たせて図書室へ。6人が段ボールを持って1列で階段を上るって、他から見たらどうなんだろう、とちょっと思った。
「お疲れ様ー」
「意外と早く終わったね」
6人でやったら、2往復で終わった。時間にしてわずか10分。運んだ段ボールは、カウンターの中の空いたスペースに積み上げられた。
「もし時間大丈夫だったら、ちょっと話したいことがあるんだけど、いい?」
一段落ついた所で、伊達が言った。時間だけはある流浪人。全員がOKした。
図書室のテーブルを囲んで、即席座談会がスタート。最初に口を開いたのは伊達。
「僕らは、流浪人会について知りたいことがあったから助っ人に来てもらったんだ」
僕は、えっ、と思った。さっきの段ボールは何だったのか。
「段ボールは、話を聞くついでみたいなもんだよ。ちょうどいい口実だったから」
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2020年12月18日 22時