僕らの世界2 (ページ30)

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流浪人　人間不信編ページ30

俺の人生は、人を信じられなくなるような出来事で幕を開けたと言っても過言ではない。

なぜなら俺ー津田詩音ーは、親に捨てられた。捨て子だった。俺を捨てた親の顔は、記憶にない。それくらい小さい頃に捨てられた。

そして俺は、物好きな大工に拾われた。現在の親父である。それで「津田」を名乗ることになった。親父は「津田工務店」というのをやっていて、7つ下の妹と一緒に暮らしていた。親父たちは早くに両親を失っていたらしいので、俺を見て思うものがあったのかもしれない。
これは俺の憶測だが、「詩音」という名前も、俺を捨てた親ではなく親父かその妹が付けたものじゃないか、と思っている。そうだったらいいな、とも思う。

そんな過去があったからか、俺は「チーム」に馴染めなかった。クラスでも、委員会でも、通っていた野球クラブでも。人を心の底から信じることができなかった。それで、部活には入らなかった。

そんな時に声をかけてくれたのが、「流浪人会」だった。
去年の9月、電車の運賃を節約するために走って家に帰っているのを流浪人の松平に目撃され、スカウトされた。
俺がよく助っ人に行く部活は、卓球、陸上、テニス、バドミントン、柔道などの個人でやる競技が多い。チームとか信頼とか、細かいことを考えなくて済むから。1人のほうが気楽なんだ。

自分だけを信じてスポーツができるっていうのは、俺の性質に合っている。これぞまさに「天職」。断言する。

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