僕らの世界2 (ページ27)

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流浪人　飽きっぽい奴編・2 ページ27

「ねえねえ、大塩くん」
昼休み、たまたま1人でいたら、誰かに声をかけられた。俺ー大塩慶一郎ーのことを「ヘイちゃん」と呼ばない、数少ないクラスメートの1人に。
彼女の名は、青葉真帆。クラスの男子の間では、なかなか美人と評判の女子。話しかけられたのが嬉しくて鼻の下が伸びるのをこらえて、
「ヘイちゃんでいいよ、俺に何か用？」
と、スマートに(これ大事)返事をした。青葉はニコッと笑ってから言った。
「今度、文芸同好会の手伝いに来てほしいんだけど」
そう言われた瞬間、俺はスケジュール帳をカバンからスマートに(これ大事)出して、今月のページを開いた。予定がダブルブッキングしないように、これだけは常にキッチリ書いている。
「文芸同好会ね、いつ？」
「今月ならいつでも。ヘイちゃんは忙しいだろうから、空いてる時でいいよ」
な、なんて細やかな気遣い…もうこの際、他の予定すっぽかしてでも行く！
…というのは冗談で、
「じゃあ、今週の金曜とかどう？」
と、スマートに(くどいようだけど、これ大事)答えた。
「金曜？OKだよ、ありがとう！じゃあ金曜の放課後、図書室に来てくれる？」
「もちろん。所で何するの？」
俺は思っていたことを訊いた。文芸同好会は人数合わせとかいらないと思うけど、どうして俺の手伝いが必要なのか、ちょっと気になった。
「大したことじゃないんだけどね、本の運搬を手伝ってほしくて」
「運搬？」
「そ。昨日新しい本が入って、今は段ボールに詰めて職員室前の廊下に置いてあるんだけどね、それが重くって。文芸同好会は2人しかいないから、ちょっと人手が欲しいの。ほらヘイちゃんって、よく野球部とかの助っ人として呼ばれてるからさ、力あるかなーって思って」
「なるほど。お安いご用だよ」
「本当？！ありがとう！じゃあよろしくね」
青葉は、話を終えて立ち去る時、小さくガッツポーズをしたように見えた。だからつられて俺もガッツポーズをした。え、何にって？決まってる、クラスで3本の指に入る美人の青葉と話せたからだよ！