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閉会式 帰路編 ページ20

片付けも終わり、文芸同好会の手伝いをした。本などの荷物は全て渚学園に戻した。
本当に、文化祭が終わった。
閉会式はとっくに終わっているけど、俺ー東海林隼ーは、ここでやっと実感した。
凉馬とふたり(海斗は先に帰って、真帆は別の友達と帰るらしい)、並んで柿沼駅に向かって歩く。「帰るまでが文化祭」だから、これもまだ文化祭の一部なのかな、などと考えていたら、凉馬が唐突に訊いてきた。
「ショージ、ちょっと今思ったんだけどさ、サッカー部のほうは大丈夫なの?」
俺は、思わず「え?」と言った。確かにここ最近は出ていなかったけど、それを心配している人物がいるとは思っていなかった。
「いや…多分大丈夫だから。コーチも俺が文化祭に参加することは知ってるし」
「そうか…ならいいんだけどさ」
その言い方には、まだ何かありそうな感じがした。
「そのことで、何かあったか?」
「いや、そういう訳じゃない。ホント、僕が個人的に気になっただけ。愚問だったね」
そこまで言われると、問いつめるのが難しくなる。まあ、本人が何もないと言ったなら、別にいいか。
「…いや、やっぱ今の嘘」
少し間を置いて否定してきた。
「どういうこと?」
「ショージ、運動部なのに文化部のこと気にかけてて、運動部の人から反感買わないかなってちょっと思う」
「え、反感?」
それは、考えたこともなかった。いや、あったかもしれないけど、そこまで深くは考えていなかった。
「そうかも…俺、よく考えたらヤバいことしてる?」
「いや、僕はショージの行動を否定してるわけじゃないよ」
「いやいや、大事なことに気付いたよ。ありがとう」
「いやいやいや、僕はそんな」
「いやいやいやいや、その意見、参考にさせていただきます」
「いやいやいやいやいや、そんな!」
「いいんだ、生徒会選挙では、1人でも多くの人に支持されるほうがいいから。中にはそういう考えの人もいるだろうから、貴重な意見として参考にさせてもらうよ」
「えー…まあいいや、やるからには当選してくれよ」
凉馬はここで折れて、かわりに俺を激励してくれた。俺、いい友達持ったな!
「凉馬こそ頑張れよ。『その他大勢』の星になれ」
「なんか素直に喜べない」
俺たちは駅までちんたら歩いた。そのせいで駅に着く頃には、空にいくつかの星がちらちらと輝いていた。

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作品ジャンル:純文学
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2020年12月18日 22時

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