僕らの世界2 (ページ16)

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先輩、走るページ16

速い速い東海林、人混みを上手くかわして駆け抜ける！

俺ー東海林翔ーは、頭の中でそんな実況をしながら全速力で走っている。それも学校の廊下を。普通は先生に注意されるけど、今日は学校全体が非日常の空気に包まれている。俺が走ったくらいで注意する先生はいないだろう。いたとしても、今の俺なら全力で振り切って逃げる。
隼とあーちゃんを探しているから。超急ぎの用だから。海斗くんと凉馬くんはしばらく戻れないことを伝えに行くため、とにかく走る。2人のうちどっちかでもいいから、海斗くんのために早く見つけたい。

文芸同好会のコーナーがある2年C組の教室に飛び込む。そこには隼もあーちゃんもいた。そして俺はめちゃくちゃ息が切れている。2人は何が起こったのかよく分からずにきょとんとしている。
「隼、あーちゃん、…やっと、見つけた！」
多少むせながら話を始める。
「海斗くんと凉馬くん、ちょっと今戻れないから。特に海斗くんは」
「やっぱステージで何かあったんだ、海斗」
隼も気付いていたらしい。
「詳しいことはまた後で。じゃあね」
俺はそれだけ言って次の目的地へ。2人はポカンとしてたけど、まあいいや。

自分はサッカー部のエース東海林隼の兄だろ、と自分を鼓舞しながら今度は外へ。
海斗くんのお母さーん、いらっしゃいますかー！
などと叫ぶ余裕は息が切れててないから、ひたすらキョロキョロしながら走った。
制服暑い！海斗くんに上着貸しっぱなしでもよかったかも！あちィー！

しばらく走ると、黒いスーツを着た背の高い女性を発見。俺と同じように誰かを探しているのか、キョロキョロしている。ちょっと話しかけてみよう。
「あの、どうなさいましたか？」
女性は振り向いた。海斗くんと同じような、端正な顔立ち。この人かもしれない。
「吹奏楽部の人は、今どこにいますか？子供を探しているんですが」
「あ、吹奏楽部はもう解散していて。あの、もしかして進藤海斗くんのお母さんですか？」
「ええ、そうです」
「ああ、やっぱり。海斗くんは音楽室にいますから、僕が案内しましょうか」
「あら、じゃあお願いしていい？」
「はい、もちろんです」
俺は笑顔で対応した。そして自分の勘のよさを脳内で褒めちぎった。

「海斗くーん」
音楽室のドアを開けて海斗くんを呼んだ。海斗くんはさっき見た時よりも目と鼻が真っ赤だった。
「どうぞ、入ってください」
海斗くんのお母さんを招き入れると、海斗くんは驚き半分、嬉しさ半分の顔で言った。
「母さん…！」

いやー俺、いいことしたな。いい先輩って感じ出せたかな？お疲れ様、俺！