優しさ・3 ページ15
「…凉馬、俺さ、変な夢見たんだ」
海斗は2人きりになった音楽室でしばらく泣きじゃくった後、唐突に話を始めた。
「どんなの?」
「母さんのクラリネットの夢。音だけはっきり聞こえた」
「音だけ?」
「うん、音だけ。母さんがよく吹いてた曲」
「ふーん…」
「…」
謎の沈黙。すると海斗はまたティッシュで鼻をかむこと3回(痛そう…)。
「凉馬…俺、これからどうしたらいいんだろ…」
海斗は、このままだとまた泣き出して収拾がつかなくなりそうだ。
先輩がいない心細さは押し殺して、僕は海斗に言った。
「海斗、やっぱ寂しいんだろうけどさ、…できる限り協力するから。話聞くし、会いに来るなり電話かけるなりして、僕でよければ」
海斗は一瞬ポカンとしてから、頑張って笑顔を作ろうとしている。泣いたせいか、表情筋が働いてないけど。
「…ありがとう」
掠れた、小さな声。それでも僕は嬉しかった。友達の力になれることと、頼りにしてもらえることが。
「友達としての義務ですから」
僕は笑顔で答えた。海斗もちょっと笑ってくれた。
「海斗くーん」
突然ドアが開いて、翔先輩が戻ってきた。そして優しい声で海斗の名前を呼んだ。それから誰かを音楽室に招き入れた。
「どうぞ、入ってください」
入ってきたのは…
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2020年12月18日 22時