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優しさ・2 ページ14

「ステージ、母さんが見に来てた」
海斗は、やっと話す気になったのか、顔を上げた。目と鼻が真っ赤だ。相当泣いたんだろう。
「海斗くん、はい、ティシュ」
翔先輩はどこからか箱ティッシュを持って来て海斗に渡した。それを受け取った海斗は、思い切り鼻をかむこと3回。ゴミをまとめてゴミ箱に捨ててから、僕の隣に座って話を続けた。
「俺の母さん、あと3日でフランス行くから、今すごい忙しくて、…ここ何週間かちゃんと会ってなかったから…」
「3日後?そうなんだ…」
「うん。で、今日俺が楽器吹いてるとこも見てたんだ。そしたらさ、俺、やっぱ今まで寂しかったんだなって思った。楽器吹いて騙し騙しやってたけど、母さん見たらなんか…ワケわかんなくなった」
正直僕も何言ってるのかワケわかんないけど、海斗はわりとマジで話してくれてるみたいだからツッコまないでおいた。
「…母さんいなくなるの、やっぱやだ…」
海斗は、また泣き出していた。小さい頃、転んで膝をすりむいた時のように泣いていた。
その時、後ろから翔先輩に肩をつつかれた。
「俺、そろそろ行かなきゃいけないから、海斗くん任せていい?」
僕は戸惑った。先輩なしで、僕だけの力で、海斗を元気にできるだろうか。
「大丈夫、また戻ってくる」
先輩は僕の心を読んだみたいに言った。
「先輩、上着…」
海斗が肩からかけていた上着を先輩に返す。先輩は上着を受け取ると、海斗の肩をそっと撫でてから音楽室を出ていった。

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作品ジャンル:純文学
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作者名:BLUE LEMON 綺 | 作成日時:2020年12月18日 22時

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