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掛かってきた電話 ページ36

≪Sera side≫




高階先生と向かい合わせる形で座る。
セロテープで糸を机に貼り付けて、心の中で気合を入れると外科結びを始める。
何事も、練習あるのみだ。

薄暗くなった医局の中に規則正しい寝息と、糸の擦れる音、紙をめくる音、キーボードを叩く音などが静かに響く。

急患の連絡なども入らず、只々穏やかに時が過ぎていく。

黙々と手を動かしていたら不意に視線を感じて、顔を上げると高階先生が僕の手元をじっと見つめていた。




高「世良くん、上達したね」




感心深そうに頷いている。
高階先生にこうやって褒めてもらえるのは素直に嬉しい。
渡海先生は褒めるなんて以ての外だし。

こうやって自分の腕を見て、認めてもらえると言う事はとても有り難い事だと思う。




世良「ありがとうございます」




まだ渡海先生には追いつけないけれど。
それでも、あの背中を追いかけて何処までも食らい付くつもりだ。

改めて心の中で決意を固めた時だった。

何処かから小さく音がする。
規則正しい振動音に加えて小さく聞こえる電子音。

誰かの携帯が鳴っているらしい。
中々鳴り止まないあたり、電話が掛かってきているのだろう。
でも、誰も出ない。

不思議に思って周りを見たけど当直で残ってる他の先生達も僕と同じように辺りを見回している。

と、言うことは。これはもしや。




世「北見先生の携帯が鳴ってます?」


高「そうかもしれない」




高階先生は北見先生を起こさぬよう、ゆっくりと立ち上がって、デスクがある方向へと向かって行く。

北見先生のイスに掛けてある白衣のポケットに手を入れると高階先生はスマホを取り出した。




高「うん。やっぱりAのが鳴っているな」




そう言いながら振動し続けるスマホを持って戻って来る。




世「誰からですか?」




場合によっては代わりに出て、後で折り返し掛けて頂けるようにお願いしよう。
そう思って明るくなっている画面を覗き込む。

ディスプレイに表示されている名前を見て驚いた。
まさか、この人が電話を掛けてくるなんて。

高階先生は驚いている僕の顔を見て困ったように笑った。




世「え、えっと…。鳴り続けてますし…北見先生を起こしますか?」




流石に、この人からの電話には出るつもりになれ無い。
申し訳ないが、北見先生を起こした方が良さそうだ。

寂しくなんかない→←仮眠の時は



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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます!そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね! (2018年6月30日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます!このお話とても好きなので、これからも頑張ってください! (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます!修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね!これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜月 | 作成日時:2018年6月9日 2時

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