仮眠の時は ページ35
≪Takashina side≫
(漸く眠ったか…)
Aをソファに寝かせてから暫くして、規則正しい寝息が聞こえてきた。
髪を撫でていた手をそっと退けて一息つく。
彼女は疲れを溜め込みやすいタイプで、更にそれを表に出さないから、以前から時々こうやって無理矢理仮眠を取らせるようにしていた。
2時間も眠れば少しは顔色が良くなるだろう。
急患が入らないことを願う。
他の医師からの視線は無視してAがやりかけの書類を片付けにかかる。
大した量は残っていないからすぐに終わるだろう。
暫く作業をしていると近くに人の気配がして、隣を見ると世良くんが立っていた。
世「お疲れ様です」
「世良くん、お疲れ」
手の中に糸と針が握られているから、外科結びの練習をするつもりでソファにやって来たのだろう。
そんな世良くんは私の隣を見て目を丸くした。
世「そこで眠ってるのって」
高「あぁ、Aだよ。疲れているようだったから寝かせたんだ」
世「でも…何でそんな狭いところで」
確かに、一人でソファに横になった方が広々使えるし、身体も伸ばせて眠りやすいだろう。
でも、Aの場合はそうではない。
高「Aは、近くに誰かが居た方が深く眠るんだ。きっと、安心するんだろうね」
もぞもぞと身じろいだかと思うと、私の白衣の裾を握っている。
それを少し眺めてからずり落ちた毛布をそっとかけ直した。
そんな様子を見ていた世良くんは穏やかな笑みを浮かべてAを見ている。
世「北見先生って、眠ってる時は子どもみたいですね」
高「そうだな」
二人で顔を見合わせて小さく笑う。
世「暫くここで練習していてもいいですか?」
世良くんが向いのソファを指差す。
高「勿論。それにしても…寮には戻らなくていいのかい?」
世良くんは今日、当直では無かったはずだ。
世「あー…実は今日の当直、田口だったんですけど。体調が悪そうだったので代わりに僕が」
特に嫌そうな様子もなく、そう言ってソファに座る。
きっと自分から進んで当直を交代したのだろう。
本当に世良くんは、心優しい。
お人好しというのはこういう事を言うんだろうか。
高「世良くん。この書類が終わったら練習を少し見てあげようか」
世「えっ!いいんですか!」
途端に嬉しそうな表情を浮かべて顔を上げる。
今日の当直は、少し穏やかに過ぎそうだ。
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霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» ご指摘頂けて本当に助かりました。ありがとうございます!そう言って頂けると本当に嬉しいです♪更新頑張りますね! (2018年6月30日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 霜月さん» いえいえ、わざわざありがとうございます!このお話とても好きなので、これからも頑張ってください! (2018年6月30日 14時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» 誤字のご指摘ありがとうございます!修正致しました。 (2018年6月30日 13時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
重岡ゆう毅(プロフ) - 「掛かっきた電話」ではなく、「掛かってきた電話」ではないでしょうか(・・?) (2018年6月30日 8時) (レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
霜月(プロフ) - たぷたぷさん» コメントありがとうございます。佐伯教授、素敵ですよね♪機会が作れたら書きますね!これからも宜しくお願い致します。 (2018年6月28日 23時) (レス) id: 830a43c59f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜月 | 作成日時:2018年6月9日 2時